雑記2013
雑多のものの記録
12月28日
今日は仕事納めの日.
すでに仕事納めを迎えたところも多いようで, エントランスに
門松を設置したままひっそりとした商業ビルも街のあちこちに
見受けられる.
クレオパトラの鼻の高さと同じように無意味な問いかもしれないが,
「クリスマスがもう数日遅かったら」と考えてみると面白い.
今年の門松はきっと発光ダイオードで彩られ, 一番高い竹にはベツ
レヘムの星が飾られていたことだろう. 新年に手渡されるポチ袋には
羽子板に興じるサンタクロースの絵が描かれ, おせちの重箱の中央に
は七面鳥が...
おせちが洋食に替わっている家庭も多いようだから, 重箱の真ん中に
七面鳥はあながち笑い話ではないのかも知れない. 来週のおせちに
期待してみよう.
では, みなさま良いお年をお迎え下さい.
12月17日
物理実験室にスタンプ(「再提出」「考察が足りない」「生データをつける」など)が
たくさんあるのは前から気づいていたが, これらが自作スタンプということを今日
初めて知った. 自作といっても手彫りのスタンプではなく, キングジムの「たいこバン」
という商品を利用している. 加工前のスタンプは紫外線硬化樹脂でできていて, これに
テプラの要領で作成したマスキングテープを貼り, 紫外線を照射, その後, 水洗いすると
マスキングした部分が流れ落ち, 凸版のスタンプが出来上がるという代物.
この一連の作業がテプラの2倍ぐらいの大きさのマシンでできてしまうのに驚いた.
「これ欲しい!」と一瞬思ったが, スタンプ自体はそれほど欲しくないし, 必要なとき
には物理実験室に来て作ればよいので, 買う必要がないことにすぐ気がついた.
しかし, キングジムではもう取り扱いの無い商品のようなので, 見つけたら即買いなの
かもしれない.
PC Watchに掲載のスタパ齋藤さんの記事に「たいこバン」に関する記述を発見
リレー連載 物欲道修行記 第20講
21:45ごろ
帰宅時に火球を目撃する. 西の空, 仰角20°ぐらいの位置に, 銅の炎色反応に似た
緑色に強く発光した光が水平線に向かって流れ, その光の軌跡に線香花火のような
火花が散っていた. この炎の色はオレンジ色で火花が散っていることから, 炭素を
多く含んだ鉄のように見えた. 一方で緑色の光の起源は見当がつかない. Wikipedia
のMeteoroidの項を見ると, 緑色が出る可能性として銅が挙げられているが,
隕石の項を見ると, 銅が主成分の隕石というものは見当たらない. 隕石は鉄と
ニッケルからなる鉄隕石とケイ酸塩鉱物からなる石質隕石, その中間の石鉄隕石の
3つに分類されるらしい. それで, 石質隕石の項を見てみると, 主要成分として
橄欖石が挙げられている. 橄欖石にはマグネシウムが含まれているので, これが
高温でプラズマとなって緑色に発光してもよい気がするが, そこまで考えると,
鉄もニッケルも緑色の範囲にスペクトルを持っているので, どんな隕石でも緑色に
光ってよいように思える.
もう少し調べてみると, American Meteor SocietyのFAQsにいくぶん詳しい
説明があった. 詳しくは上のリンク先の説明を読んでほしいが, 流星物質が大気に
突入すると, 大気中の成分も含めていろいろ発光するので, 火球の発光色を議論
するのは難しい問題ということらしい.
12月16日
チョークによる手荒れがひどいのでチョークホルダーを購入した.
シンワ チョークホルダー 78501
チョークを直接つかむのに比べ, ホルダー越しだとチョークと黒板の接触
具合がわかりにくくなるので, 若干書きにくくなるところはあったけれど,
チョークによる手荒れはかなり抑えることができた.
ひとつ難点を言えば, キャップについたマグネットがひどかった.
上にリンクしたレビューにも記載があるけれど, 接着剤による接着が甘く,
キャップを黒板につけて, 黒板からはがすとそのまま磁石が黒板に残ってしまい
えらく難儀した(購入した5本のうちの2本が不良品).
まあ, 自分で糊付けした後は何の問題も無く使えているのでよいのだけど,
マグネットは外した状態で売るほうがたぶん親切だと思う.
12月13日
NHKの「無頼の遺言 棋士・藤沢秀行と妻モト」を見ていたとき, 秀行さん
のひとつの言葉が突き刺さった.
「もう少しマシになりたいだけ」
現役を引退し, 年をとってもなお囲碁をつづける秀行さんに「なぜ続ける
のですか?」という問いに対する答えが上のことばだ. 生きることと打つ
ことが一緒の人に対して, なんて失礼な質問なんだろうかと思ったけれど,
秀行さんのこの返答には参ってしまった.
つまり, この問答は
Q: 「なぜ生き続けるのですか」
A: 「もう少しマシになりたいだけ」
ということだ. 生きることの目的は人それぞれでよい. でも, この回答は
碁打ち藤沢秀行の凄みと禅味が伝わってくる秀逸な回答だと思う.
ねらった発言か, 偶然の一致かはわからないが, 孔子さまもこう言っている.
子曰 飽食終日 無所用心 難矣哉
不有博奕者乎 爲之猶賢乎已
子曰わく、飽くまでも食いて日を終え、心を用うる所無きは、難いかな。
博奕なるもの有らずや。之を為すは猶已むに賢れり。
「之を為すは猶已むに賢れり」
基礎科学の研究というのも, そういったものの一つなのかも知れない.
12月11日
物性研で研究会に出席. スパコン共同利用研究会は何度も参加しているが,
講演者として参加するのは院生の時以来のような気がする.
発表スライドが講演時間に比べて詰め込み過ぎなのは最初から分かって
いて, どこを削るかいろいろ考えていたのだが, あえなく時間切れ.
物性研に向かう電車の中で, 講演時間内にトークを終わらせるため,
各スライドで話す内容と話の順番を頭の中に叩き込む. この作業に
よって, 話すペースを効率よく上げることができ, なんとか時間内に
話すことができた. 自己評価としては``可''ぐらいの発表だったが,
講演内容を理解した上での質問をたくさんいただいたので, 自分が
思っていたよりは内容が伝わったのかも知れない. 講演後もいろんな方
から講演内容について話しかけられたので, それだけでも有意義な
研究会だった.
「最近のスパコン共同利用研究会はつまらなくなっているのでは?」と
いう話が出たのだが, これは真剣に考えるべき問題のように思う.
たしかに10年ぐらい前は, はじめて聞く計算手法や興味深い物理の話が
多く, 研究会に参加するのが当たり前と考えていたと思う. 実際に
招待論文をならべてみると, 昔のほうが研究手法に直接ひびくような重要な
講演がなされているように感じる. 最近は, 特に計算手法の面で, 出尽くした
感があって, それが停滞感を感じさせるのかも知れない. そう考えると,
物性研スパコンは2000年に大きな変革, つまり Massively Parallel
Computer の導入を迎えていて, それが計算手法と物理の研究の双方に
大きな影響を与えていたという推測もできそうだ. あれから10年以上経つわけ
だが, 計算手法に変化を与えるような変化がスパコンには訪れず, 結果
として, よくわからない停滞感を与えているような気がする. 2015年の
更新はどうなるか分からないが, 今現在, 計算手法の変化をもたらしつつある
演算加速装置の導入などをすると, 案外, また新しい風が吹くのかも知れない.
大事なのは, 新しい計算機の導入によるインパクト(つまり新しい計算機で
これまでできなかったことができること)と利用しやすさ(利用申請してすぐ
使えるとか. 研究室レベルでも小規模なものを導入できるとかということ.
CUDAのようなプログラミングの問題はなんとでもなる)なのではないだろうか.
最近の研究会の面白い/面白くないというだけの話からだいぶ風呂敷を広げて
しまった. もう少し話の飛躍がないところで気がつくことは,
- 研究会疲れ(成果報告の公開が重視されるあまり, 研究会が無駄に増えている気がする)
- 若手研究者の減少
- 優秀な人材が物理以外に流れている
- 分野が成熟して, 計算機と物理学双方の深い理解が必要となり, 新規参入が敬遠されている
話もあった. 10年後もこの分野が魅力あるものであるために, 自分にできることから
やってみようと思う.
11月28日
今日も物理学実験の実験発表会本番. 私は火曜日担当なので, 学生の
実験発表ではなく, CROSS東海から来ていただいた大石さんの講演を
聞きに行く. 2日前の松浦さんと所属がかぶったのは意図したものでは
なく, 講演会をそれぞれの教員が独立で段取ったら偶然重なってしまった.
まあ, 同じところから呼んで悪いことはないので, そのままの開催とした.
J-PARCの中性子実験装置を見ると, BL-02: DNAとBL-15: TAIKAN
の位置関係的にはバランスがとれていると言えなくもない?
大石さんご自身の研究に関する話はカイラル磁性体の話. 今年は羽田野研
夏合宿(そういえば月曜日の物理学実験の講演は羽田野先生なのであった)で
勉強したのでドンと来い, という感じだったが, 結構あっさり話が終わって
しまった. 少し残念ではあったが学部1年生相手だから, ガッツリやっていた
だいても学生ドン引きで, それはそれで困っただろう.
11月26日
今日は物理学実験の実験発表会本番. 先々週実施した実験について,
実験目的や実験方法, 結果と考察をプレゼンテーション資料にまとめ,
7分で発表するというのを学生にやってもらっている.
昨年までは模造紙で発表をしていたのだが, 今年からはパワポなどを
使った発表に切り替えた. 模造紙と異なり枚数制限がないので, これ
までとは違なるまとめる力と見せる力が要求されるのだが, 学生による
力量の差が思いの外, 大きく出て面白かった. 学生の発表を見ていて
思ったのは, 当たり前だけど, 実験の目的や核となる内容が自分に
関わるものとして理解できているかどうかが大きな分かれ目だったよう
だ. 自分の中にあるものを話そうとすれば, 資料作成や発表も生きた
ものとなり, 実験の手引書に記載されている内容を受け売りで話そう
とすれば, 資料はつまらない事実の羅列になり, 発表は読み上げる感じ
となって, 聞いている方は退屈する.
発表会のあとは, CROSS東海の松浦さんをお呼びして講演をしていた
だいた. J-PARCの紹介から中性子散乱実験がどういうものかという話,
誘電体の臨界緩和からフラクタルの話までしていただいた. 学生の反応
はそれぞれだったけど, 興味を持ってくれた学生も少なからずいたようだ.
11月25日
トイレの隅で何か大きな影がモソモソ動いているなあ, と覗き込むと,
そこにいたのはザトウムシ. ザトウムシを目撃するのはだいたい夏や秋で,
冬や春にはほとんどみかけない気がする.
気になったので調べてみると, ザトウムシと近いとされるダニには季節消長,
つまり, 秋から春にかけて活動を停止させる期間があるとのこと.
なるほど, と納得しかかったが, ザトウムシは分子解析の発達により, サソリ,
カニムシ, ヒヨケムシとともに走脚亜綱へと分類された, との記載もある.
これらの"ムシ"にも季節消長があるのかどうか気になるところだが, Wikipedia
で調べた範囲内では, そのような記述を見つけることはできなかった.
11月22日
「東工大のTSUBAME-KFCがThe Green 500 Listで世界一」ということで,
東工大のpress releaseを読む. TSUBAME-KFCの用語説明を読むと,
TSUBAME-KFC: TSUBAME Kepler Fluid Coolingが語源。TSUBAME2.5と
同様にNVIDIA社のKepler世代GPUを搭載していますが,
TSUBAME-KFCでは計算ノードを液体に浸けて冷却している
特長から名づけられています。
(太字部分は私が勝手に太くしました)
「液体」を媒質にして計算機を冷やしているわけだけど, KFCで使われている媒質は油.
校章のTSUBAMEがKFCな訳で, ずいぶんスパイスの効いたジョークだなー, と思ったら
こんな本音も発見.
油の温度は35℃〜45℃(揚げ物はできない...)だそうだから, チラーにはかなり
やさしい温度設定だろう. こういう温度設定ができるのは, 計算ノードを直接油に
浸しているから. 計算機のファンから排出される熱量を冷却水で計算室外に運び出す
などの間接的な冷却方法ではこうはいかない.
京ではCPUやICCにクーリングユニットを貼り付けて水冷をしているわけだが, CPUや
ICCとの間に熱伝導が良いとはいえ, 銅が挟まっているわけで, 油浸の方が冷却効率は
良いだろう. 問題はPCパーツに油に溶けるものがあったりすると嫌なのだが, その辺が
どうなっているのか気になる.
油浸と東工大で思い出したのがETA10. リベンジではないと思うけど, 2つのマシンを
なんだか重ねて考えてしまう.
11月20日
Emacsを24.3にアップデートしてからmigemoの調子がおかしくて,
調べてみてもよくわからなかったのだけど, 今日あらためてGoogle先生
に聞いてみると, migemo.elを入れ替えることで解決するようです.
GitHub emacs-jp/migemo.el
11月18日
仕事中にお腹が減ると, 決まって思い出すのが数学者のEmmy Noetherだ.
何の本で読んだか忘れたし, 正しく思い出すこともできないのだが, 彼女に
まつわる話は以下のようだったと思う.
彼女は研究に没頭すると, まわりのものが何も見えなくなるタイプ. 食事は
不規則になり, 机のまわりはクッキーのカスだらけ. 見かねた同僚が
「クッキーを仕事中食べると太るよ」と注意すると,
「空腹で仕事できるわけないじゃない」
というのが彼女の答え. 容姿より研究を大事にしたこのエピソードを思い出す
たびに, 研究者はかくあるべしと思うのだが, 同時に凡人が食欲だけ天才の
マネをしてみてもみっともないだけだと思い, 私は空きっ腹をかかえて仕事を続ける
のである. 時には誘惑に負けながら...
11月16日
マリオブラザーズという名前に何かよくわからないひっかかりを感じて,
他に同様の名前を思い浮かべてみると,
と考えてみて気がついた. マリオブラザーズのマリオは兄の名前であって,
家族の名前ではないと. なんか不公平だな, と思ったが彼らにはfamily
nameがないらしい.
11月9日
結構肌寒い. 誰だろう, 今日は暖かくなると言ったのは.
ダースって何語由来なんだろうか. 英語のdozenが訛ってダースになった
という記述をネットでみつけたけど, どんなに訛っても[dʌ́zn]をダース
とは発音しないと思う. ローマ字読みと発音が離れている例としては,
hierarchy [háiərɑːki]とかannihilation [ənàiəléiʃən]とかがあるけど, dozenは
ローマ字読みしてもダースにはならない.
ちなみにdozenを英語-発音記号カタカナ変換を行うと,
ドウズン
という結果が得られる.
11月8日
お昼に外に出て, 今日は暖かいな, と思ったらセミの声.
先日の生き残りだろうか. まだまだ元気そうだ. 明日ま
では暖かいらしいから, 明日もその声を聞けるかもしれ
ない.
大学裏の見沼代用水西縁まで足をのばすと, カンタンが
鳴いている. 頭の中でセミとカンタンの声が入り交じり,
少々混乱する.
11月7日
今日, ヒートポンプを暖房と冷房で使ったときに, どちらの方が効率が
よいだろうかという話が上がった. 室内と室外の温度差だけで決まると
いう話を聞いて, 本当だろうかと疑問に思ったので調べてみた. 調べて
みると, 機種によってそれぞれ差はあるのだが, どの機種でも暖房の方が
若干COPが大きいことが分かった. その理由を記述したものを探しては
みたのだが, ついに見つけることはできなかった.
標準的な熱力学の教科書では, 熱機関は機関外部の熱浴からエネルギー
を得て仕事をしているのだが, 実際には電気からエネルギーをもらって
おこなう仕事もしているわけで, 電気代を支払う必要があることからも
わかるように, 無視できない寄与が電気から来ているはずである. 電気的
エネルギーがした仕事から出た熱は暖房に使うことができても, 冷房に
は使えないので, 暖房のCOPの方が若干高くなっているのだろうと思う.
11月6日
Tait-McAulayの定理
$\int (\vec{n}\times\nabla)\times\vec{A}\,dS = -\oint \vec{A}\times d\vec{r}$
を見ていて, Taitの名はたまに聞いてもMcAulayのことはよく知らない
ということに気がついた. Taitは結び目理論で有名なので, 可解模型に
興味をもった人なら, 一度は目にする名前だろう. McAulayについて
調べてみると, 四元数を拡張したものを研究してたオーストラリア人らしい.
通常の四元数は,
$q = w + xi + yj + zk$
と書けて, $w, x, y, z$はそれぞれ実数だが, McAulayが研究していた
Split-biquaternionでは, $w, x, y, z$を分解型複素数としたもの
とのこと. まったくの初耳の話で, McAulayを知らないことに合点がいった.
そういえばオーストラリア人の物理学者って誰がいたっけ, としばし考え,
Baxter大先生をすっかり忘れていたのは内緒の話である.
11月5日
物理学実験の講義では, 第9週と第10週に実験発表会というコマを
用意している. 価格面での制約とメンテの手間から, 実験室では
Windowsパソコンを用意しており, 学生はPowerPointで発表を
行うのだが, 今年はBeamerを使いたいという学生が出てきた.
ノートパソコンには$\TeX$は入っていないので, どうするのか聞いて
みると, USBメモリに環境一式入っているので問題ないとのこと.
(実際に確認してもらって, 本当に問題ないのも確かめた)
私はBeamer使いではないのだが, Beamerを使っておられる,
あんな方やこんな方を思い浮かべると, この話を喜んで聞いてもら
えそうなので, ここに記載した次第である.
11月2日
階段でハラビロカマキリとご対面. 前脚の鎌が変にまがっているな,
と思ったら, それはカマキリの口からはみ出たバッタの脚だった.
小学生のころ, 残酷な遊びで培った経験によると, このカマキリは
そろそろ卵を産むはず. あとでもう一度来て, 確認してみよう.
10月25日
豊洲で共通学群の卒研説明会に参加. 大宮では物理学の
基礎しか教えていないので, できれば卒研で物理の本当
の面白さを知って欲しいと思うけど, 基礎的な内容で苦
労した上に, 卒研でも勉強したい思う人は少ないよね.
まあ説明会に参加していなくても, 興味があれば卒研の
内容を数分で説明しますので, 興味を持った学生さんは
メール等で連絡して下さい.
富田研の説明の後, 説明会は途中であったが失礼して,
小川郁子さんの江戸切子を見に, 六本木のサボア・ヴィー
ブルを訪れる. 江戸切子というと何か伝統的なものを思い
浮かべるけど, 小川さんの作品からは「伝統」というより
は, 「小川さん個人の作品」という印象をとても強く感じ
る. もちろん伝統に裏打ちされた技術あっての作品なのだ
ろうとは思うけど, 型にはまった「江戸切子」から外れて,
自分の色をとても豊かに表現されているのはすばらしいこ
とだと思う. 当日は, 小川さんと直接お話をする機会も
持てて, 作品を見ただけではわからない苦労話なども聞く
ことができた. 話を伺って特に感じたのは「攻めているな
あ」というところ. 切子の技術を習得して, これで良い,
というところでとどまるのではなく. その一歩向こう側を
常に見ている. たぶんのその姿勢が, 作品の一つひとつ
に小川さんの色を与えているのだろうなと思う.
写真では切子の美しさはなかなか伝わらないので, 本当は
実物を見て欲しいところ.
panorama tmbr - 小川郁子
10月18日
9月6日に神経を抜いた歯の治療がようやく終わった. 7週間.
長くかかるとは事前に言われていたが, やっぱり長かった.
治療で歯医者に通う間, 気になっていたのは, 同世代で同性の
患者と一人も会わなかったこと.
歯医者で予約を取るときに, 世間では「働き盛り」と言われる
世代の人間に無茶な時間(平日の昼間)に予約を入れさせるなあ,
と思っていただのだが, あれか, 世間で「働き盛り」と言われ
る人間は, そんな時間に歯医者が予約を入れようものならきっと
「そんな時間に来るのは無理です」と言うのだろう.
平日の昼間に休みを取れて, 職場にはTシャツにジーンズで来れて,
大学教員は気楽な仕事と世間では思われているのだろうなあ.
なにか反論できないものかと考えてみたが, 高校の同級生たちの
ほとんどが, なんらかの薬を毎日飲んでいることを考えると,
特に健康に気をつかうこともなく健康でいられるのは, やっぱり
気楽な仕事なのかもしれない.
10月16日
台風26号のため午前中は自宅待機.
空気は澄み, 空はよく晴れているが, 台風がつれてきた
暖気でやや蒸し暑い. そして今日もセミの声. 今日は,
エゾハルゼミ3匹に, ツクツクボウシが1匹.
一週間前に, この時期に羽化するのは「かなりのバクチ」と
書いたが, これだけの期間でこれだけの個体数が羽化して
いれば, 子孫を残せた個体はそれなりの数にのぼるだろう.
昆虫畏るべしである.
昆虫は天候の予想能力が高く, 大雪の季節前にカマキリは
高い位置に卵を残すなどと聞く. これらの話の検証はされて
いないようだが, 検証できなくとも昆虫の高い適応能力を
示すには十分だ.
たとえば, 今回のセミの件. 一週間前のセミが無駄死にした
としても「かわいそうだったね」の一言で済み. くだんのセミ
が子孫を残せて, その子孫たちが羽化する数年後に同じような
気象が繰り返されれば, その子孫たちの競争相手は少なく,
大きな利益を得るはずだ. (一寸の虫にも五分の野心?)
10月12日
Los Alamosにいる紙屋さんからプレプリントが届く.
紙屋さんからのメールに「遊んでいるうちに楽しくなってまとめた」
と書かれていたとおり, スピン系の統計物理学に親しむ者のココロを
くすぐる, なかなか楽しい論文だと思う.
(遊んでいるばっかりで, まとめない私は反省すべきだとも思う)
有限積層三角格子イジング模型に潜む量子-古典対応や, Wannier
多様体からの低エネルギー励起をダイマー模型で調べると, 転移の
ふるまいが定量的に分かってしまったり, 最後の着地まできれいに
まとめられた論文に仕上げられている. これまでこの模型の話は何
度か耳にしていたのだが, この原稿でかなりの部分を理解できたよ
うな気がする.
S.-Z. Lin, Y. Kamiya, G.-W. Chern, and C. D. Batista:
``Reentrant Berezinskii-Kosterlitz-Thouless Transition in a Triangular Ising Thin Film'',
arXiv:1310.3468.
10月11日
今日は豊洲キャンパスで第3回電通大・芝浦工大合同セミナー.
学生の中間発表の会で, 今年はB4が2名に, M1が3人.
芝浦に移ってからは学生の発表を聴く機会が減っているので,
いろいろと新鮮さを感じた一日であった.
10月9日
一昨日からの陽気に誘われたのか, エゾハルゼミが鳴いている.
季節外れにあえて羽化するのも戦略のひとつだと思うけど, 10月も
中旬に差しかかった今日を選ぶのはかなりのバクチだろう. こういった
選択はどれほど主体的に選べるのだろうか. 遺伝子だけで決まっている
ようにも思えないが, セミの幼虫たちが計算尽くで羽化するタイミング
を図っているようにも思えない. 素数ゼミの発生周期のメカニズムが
自然淘汰による最適化の結果によると考えると, 遺伝子的な要素が強い
のだろうと推測されるが, 事実はセミに聞いてみないとわからない?
10月8日
今年のノーベル物理学賞は大方の予想通り, フランソワ・アングレールと
ピーター・ヒッグスの両氏に決まりました. CERNのLHCにおける実験の発表後
「神の粒子」とか「素粒子の自転」とか, 首を傾げたくなるような表現が目に
つくようになりましたが, 今回の受賞を機に, いくらかは正されていくのかなと
期待しています.
とりあえず, 非専門家向けに書かれたヒッグス粒子の解説として,
ヒッグス粒子ってなあに?
を挙げておきます.
追記(10月9日): 今回受賞したお二人の他にもう一人, 大事な人が忘れられているようなので,
こちらもリンクをはっておきます.
Robert Brout (Wikipedia)
10月4日
仕事を早めに切り上げて, さいたま新都心で開催されている「けやきひろば ビール祭り」
に参加. 今年は記念すべき10回目ということで, さいたまスーパーアリーナで開催されていた.
去年と同様, けやきひろばでやっていると思っていたので, けやきひろばにテントが一つも
出ていないのを見たときは本当に焦った.
以下, 自分のメモ用に飲んだビールの銘柄と感想.
一杯目:大阪 箕面ビール, W-IPA
しっかりした味と香り. 通常の2.5倍のモルトとホップで仕込んであるのは伊達ではない.
アルコール度数は9%. IPAと分かって飲んだけど, 空きっ腹に飲んだのはまちがいだったかも.
二杯目:南信州ビール, 駒ケ岳エール
かなりさっぱりしたビール. まだ二杯目ということあり, もう少し飲み応えがあっても
よかった.
三杯目:田沢湖ビール, 飲み比べセット
バイツェン:小麦が香るフルーティーなビール. 文句なくうまい.
ピルスナー:標準的なビールの味わい. 標準的と言っても, こういうのがちゃんと美味しい
のは重要だと思う.
アルト :アンバーエール. 苦みと香りが絶妙. また飲みたい.
ラオホ :燻製の香りがする変化球のビール. なんでもモルトを燻製しているとのこと.
最初の一口は意表をつかれたけど, 慣れてみると, なぜ燻製ビールがスタン
ダードになっていないのかが不思議に思うほどうまい.
四杯目:スワンレイクビール, ポーター
新潟からの出店でスワンレイクという名前. もしやと思えば瓢湖にあるお店だった.
真っ黒な見た目ほどにはクセはないが, しっかりした苦みのなかに, クセになる香り.
おなかはかなりタプタプになっていたけど, 最後までおいしくいただいた.
10月3日
物性研の熊野さんから共著論文出版の連絡をいただく. 論文で主張している
内容, 計算, 数値データはいずれも明瞭で, すんなり通ると思ってたら大まち
がいで, 投稿から出版まで結構時間がかかってしまった.
論文の内容は,
・XY模型などで通常用いられている無限小の捻りを考慮したHelicity
modulusの計算をクロック模型で使っても正しい結果は出ませんよ.
・Helicity modulusの定義に忠実に, クロック模型で許されている
最小の捻りによる自由エネルギーの変化を考慮すれば正しい結果が得ら
れますよ.
といったもの. 分かってみれば当たり前のことだけど, 従来の定義による
Helicity modulusでも計算結果は得られてしまうし, その解釈をまちが
えてしまうとおかしな結論を導いてしまうので注意が必要なのである.
その理由と解決方法をしっかりした形で提示した論文なので, 離散対称性を
持つ系への捻りの影響について興味がある人は是非論文を読んでみて下さい.
Y. Kumano, K. Hukushima, Y. Tomita, and M. Oshikawa:
"Response to a twist in systems with Zp symmetry: The two-dimensional p-state clock model",
Phys. Rev. B 88, 104427 (2013).
9月28日
日本学術会議からと称するアンケート依頼が来ているのだが, 協力する気になれなくて
困っている. 理由は簡単で,
- URL短縮サービスを使ってアンケートサイトのURLを隠している. (隠すつもりは無かったとしても)
- アンケートサイトがGoogleフォームを使っている. (誰が開設したサイトか分からない)
協力することにやぶさかではないのだが。。。
URLを隠すことの害とその対策については, たとえば下記ウェブページを参照
リンク踏む前に試してみよう。短縮URLで騙されないBit.lyの裏ワザ
9月18日
今日はフーコーの生誕194周年ということで, Googleのロゴは
フーコーの振り子. 地球の自転を身近に感じられる良い実験だと
思うのだけれど, 如何せん, 振り子の面の回転に時間がかかり,
見る人に忍耐を要求する. 三角測量で使うセオドライトなどを
利用して, 短時間で振り子の面の移動を感じることはできない
だろうか.
9月17日
最近, XXさんのまわりに虫がよってくるようになっているらしい.
家の木槿にはオトシブミが湧き, 米びつにはコクゾウムシ?が湧き,
今朝は巨大な黒いイモムシを目撃したらしい. なんて話をしていたら,
目の前にオオカマキリが飛んできて, 床ではカマドウマが跳ねている.
人生で3回くるといわれているモテ期. もしかしたら, これもカウント
されてしまうのだろうか?
9月16日
台風18号による雨風をバックに, はっぴいえんどの颱風を聴く.
曲中の台風とこのごろの台風との間に微妙な断絶を感じたのだけれど,
これは, 最近の治水・下水管などのインフラの整備により, 今日日の
台風は昔ほどワイルドに感ぜられなくなっていることから来ている
気がする.
9月14日
Kさん夫妻の結婚祝いを兼ねた川島研BBQパーティーに参加.
台風が迫るなか, 信じられないほどの快晴で, 9月も中旬だと
いうのにばっちり日焼けしてしまった. 炎天下で肉を焼いたり,
子供達と遊んだりしていたので, まあ仕方がない.
二人とも川島研関係者で, 私は二人ともオーバーラップがある
のだが, ふたりが同時に川島研にいたことはなかったらしい.
思い返してみるとたしかにそんな気もする.
20人超のBBQパーティーは大盛況のうちに終わり, 帰り道が
同じ新婚のお二人と途中まで一緒に帰る. 昔, 武蔵野線の車中
から見た巨大なレンギョ(ハクレン)の話をしたのだが, 残念
ながら信じてもらえなかった. しかし今は昔と違って, ネットで
いろいろと検索できるので検索してみたら, デイリーポータルZの
ライター平坂さんが記事にしていた(ココ). 平坂さんが釣り上げた
のも十分に大きいが, 電車から見えたのはたぶんこの1.5倍くらい
はあったかな. って, やはり信じてもらえんのだろうなあ.
9月13日
今日は歯医者で先週抜いた神経の処理の続き. エレン・イェーガー並みに
神経が回復していたらどうしようと心配していたが, まあ、そんなことは
なく, ただ神経がちゃんと死んでなくて治療中は少し痛かった.
神経はアルデヒドで殺す(失活)とのこと. Googleで検索すると, 製品名
はペリオドンの可能性が高い. 神経をゆっくりとホルマリン漬けにしてい
くということか.
9月12日
今日, キャンパス内でアカボシゴマダラが飛んでいるのを見た.
その名の通り, 後翅の赤い星がきれいなチョウだが, 外から持ち
こまれた外来生物とのこと.
9月10日
身近な人(あえて名前は伏せておく)がヤマビルに血を吸われた.
吸われた痕を見せてもらったが, 吸われたのが足首周辺で, かつ,
腫れてもいないので, 蚊より質が良いのかも. 吸われている時は,
チクチクする程度とのこと.
Wikipediaに,
>> ヤマビルは陸に棲むヒルで、吸血性のヒル類としては日本本土
>> では唯一の陸生ヒルである。
とあって, コウガイビルは陸生には入らないのかな, と思って
調べてみると, コウガイビルはヒルと名前がついていても, ヒル
の属する環形動物門ではなくて, 扁形動物門ウズムシ目なのね.
そう言われると確かにプラナリアに似ているかも.
9月9日
羽田野研夏期研究会に参加してきた. 講師は放送大学の岸根順一郎先生.
「カイラル磁性体の数理と物理」というタイトルで主にCr1/3NbS2における
美しい数理と物理の話を聞き. また夜の特別セッションでは, 岸根先生の
美声を拝聴することができた. 研究会のノートはたぶん物性研究において
出版されると思うが, 内容は日中のセッションに関するものに限定される
と思われる.
9月6日
今週初めぐらいから, 夜寝る段になると歯の中が腫れたように痛むように
なったのだが, 日中はなんともないので放っておいたら, ついに昨日, 痛みで
寝られないほどになったので, 観念して歯医者で診てもらうことにした.
診断結果は「急性歯髄炎」. 炎症を起こしている歯の髄を抜けばたぶん良く
なるが, どの歯の髄が炎症を起こしているかは分からないし, 歯の髄を抜いて
も歯の痛みが歯髄炎が原因でなければ治療にはならないとのこと.
そんな一か八かみたいな治療に不安を覚えつつも歯髄を抜き取ることを決断.
今までの歯医者通いの中で最も痛みをおぼえた治療であったが, これでも
麻酔が効いている方らしい. 歯髄炎が進むと麻酔は効かなくなるとのこと.
明日からは研究会が予定に入っており, 「バクチ」に負けた場合, 研究会
日程中は痛みを我慢しながらの参加となる.
(追記: 「バクチ」には勝ったようで, 髄を抜いたことによる鈍痛の他は
特に痛みを感じることなく研究会に参加できた.)
9月4日
「盃」という漢字を出そうとして「さかづき」と入力しても, 正しく
漢字変換されなかった. 「酒坏」は「さけ+つき」だから「さかづき」
が正しいはず. と思って調べてみると, どうも「さかずき」が正しい
らしい, ただし「現代仮名遣い」の範囲内で.
Wikipediaの現代仮名遣いのページに『四つの仮名の表記:「じ」
「ぢ」「ず」「づ」』という項目があって, そこには「じ/ず」を
本則として, 「ぢ/づ」を準則とするとある. つまり「さかづき」
は間違いではないけれど, 「さかずき」の方の表記が推奨されてい
るということだ. しつこいけれど, 「現代仮名遣い」の範囲内での
話.
「現代仮名遣い」というものがどれほどの拘束力を持っているのか
は知らないけれど, もとの語が持っている情報を落としていること
は問題だと思う. つまり, もとの語から言えば「さかづき」や
「はなぢ(鼻血)」という表記が正しいのだが, これを「づ→ず」
「ぢ→じ」という変換によって, 本来の言葉が持っている情報
を落としているのだ.
(ちなみに, 「地震」は現代仮名遣いと関係なく「じしん」という
表記が正しい. 理由はWikipediaの現代仮名遣いのページに載って
いる)
似た問題で, 漢字の問題もある. たとえば, 斉次方程式は「せいじ
ほうていしき」で複素共役は「ふくそきょうやく」だ. これを「さ
いじほうていしき」と読んでしまうのは, 「斎」の字と「斉」の混
同から来ている. 「斉」を「さい」と読むのはたぶん「斉藤さん」
の場合だけで, たとえば「斉」一文字だと昔の中国の王朝「せい」
になる. それぞれの漢字の意味を考えるとより明快で, 「斉」は
「一斉」の「斉」で, 「校歌斉唱」などに使われる. 一方の「斎」
は祭事のために清く整えることで, 「斎場」や「斎戒沐浴」などに
使われている. 面白いのは, 「斉」に「さんずい」や「りっとう」
が付くと読みが「さい」になることで, たとえば「共済組合」や
「合成洗剤」というようになる. なぜなのか気になるところだが,
今のところよくわからない. また全然関係のない話だが, 松平不
昧公の孫に松平斉斎という人がいるのも面白いといえば面白い.
複素共役の方は話がもっと深刻だ. 共役の元の表記は共軛で,
軛は訓読みすれば「くびき」. 別の漢字を使えば「頚木」で馬車
や牛車などで馬や牛の頚にくくりつける木のことだ. 軛は頚に右
と左につけるから, 2つで1セットになっている. このことをふ
まえると, 複素共軛やエルミート共軛という表現がしっくり馴染
むように思う. ただし, いつもしっくり来るかというとそうでも
なくて, 群論の共軛元や, 共軛類(単に類と言えばいいか...)
を考えると, 共軛よりも共役の方がしっくりする気がしないでも
ない.
話が脱線したが, 「共軛」と本来の表記であれば「きょうえき」
とは読まないことが明らかということだ. 軛の音は旁の厄から
来ている. 「厄年」などにあるように「厄」の読みは「やく」
だから, 常用漢字とか気にせず「軛」の字を使っていれば,
共軛を「きょうえき」と読み間違えるようなことはなく, 現代
仮名遣いなど気にしなければ, 「さかづき」と入力して「盃」
と変換されたのではないかと思った次第である.
9月2日
近年稀に見る雷雨. 越谷や野田では竜巻も発生したらしい.
とにかくすごい雷だったが, おどろいたのは2回の瞬停で済んだこと.
この辺は東埼玉線, 岩槻線, 七里線と送電線が密に走っているからだろうか?
どういう仕組みで本格的な停電を回避しているのか, 機会があれば一度調べてみたい.
8月30日
27日の朝ドラで登場した前髪クネ男が人気になっているらしい.
前髪クネ男を演じているのは勝地涼. 大河「八重の桜」では,
日本人初の物理学教授にして, 第6代および第9代東大総長であった
山川健次郎を演じている. ちょっと複雑な気持ち...
8月29日
ほとんど誰の役にも立たないトリビアをひとつ.
大宮の駅ナカで満月ポンが売られている
たこ焼きも売られていれば買ったのになあ.
8月23日
東京地形地図を見ていると, 大宮の氷川神社が芝川沿いの入り江にあたる位置に
あることに気がついた. RPGであれば, ほぼ確実に龍神の神殿がある位置である.
気になったのでWikipediaで氷川神社のページをみてみると,
>> もとは見沼の水神を祀っていたと考えられている
という記述がすぐに見つかった. なるほど, であれば, 昔の見沼はいまの氷川
神社の辺りまで来ていたのではなかろうか. と思い調べてみると, これもまた
Wikipediaの見沼の項に見つけることができた. 予想通り, 見沼のほとりに氷
川神社が位置していたことを確かめることができた.
この昔の見沼の地図を見て気づいたことがもう一つある. 土呂(トロ)と砂町が
見沼を挟んでお互いの対岸に位置しているのだ. この辺の昔の見沼の流量がどれ
ほどであったかはわからないが, 土呂と砂町のあたりで川が湾曲しているように
見え, かつ, 砂町の方が浸食面, 土呂の方が堆積面側に位置していることから,
見沼が作った土地質がそのまま地名になったことが推測される. 「ドロ」に
「スナ」という短絡的な推測だが, 昔の見沼の位置を見ると, そんな推測も
あながち間違ってはいないのではなかろうかと思ってしまう.
もう一つ, 膝子に膝子沼という膝小僧に似た形の沼があることに気がついた.
これも地名の由来に違いあるまい. と思って調べてみたが, 農家の娘が膝のよう
な形の奇形児(肉塊)を産み, それを埋めた塚の名「膝子塚」から来ているとのこと.
なにごとも推測通り, というわけには行かないようだ.
8月16日
フランスの国立土木学校(École nationale des ponts et chaussées)
のフランス語表記を見て, 学校が創立された1747年には「橋と道路」が土木だった
のだな, と思う. では日本語ではなぜ「土木」なのか, が気になった. Wikipediaで
調べてみると,
名前の由来は中国の前漢時代の古典「淮南子(えなんじ)」にでてくる
築土構木という言葉から来ているといわれているが、実際のところは
はっきりしない。
とのこと. 淮南子は, 前漢の武帝の頃の淮南王劉安が編纂させたということだから,
紀元前100年ぐらいに書かれた本. そのころの中国であれば素朴な土や木の他にも
石積みや煉瓦などもあったと思われるが, それらもひっくるめての土や木のことか
と想像しながら検索を進めると, 土木学会関東支部のページに, 淮南子からの抜粋
古者民澤處復穴 冬日則不勝霜雪霧露 夏日則不勝暑熱蚊虻
聖人乃作 為之築土構木 以為室屋 上棟下宇 以蔽風雨
以避寒暑 而百姓安之
古は民、澤處復穴し、冬日は則ち霜雪霧露に勝えず、
夏日は則ち暑熱蚊虻に勝えず。
聖人及ち作り、之が為に土を築き木を構へて、以て室屋と為し、
棟を上にし、宇を下にして、以て風雨を蔽ひ、以て寒暑を避けしめ、
而して百姓之に安んず。
と, 明治時代の先人がここから「土木」とした, ということも書いてあった.
こうやって語源までたどって見ると, 日本語の「土木」は土と木という素材の名で
構成されているとはいえ, その心はむしろ英語の"civil engineering"のほうに
近いのかなという気もしてきた.
8月15日
寄生蟲図鑑(注意:リンク先に寄生虫写真アリ)
が面白かった. 定番のロイコクロリジウム, フタゴムシ, サナダムシ, ハリガネムシか
ら, 目黒寄生虫館の設立者, 亀谷了(かめがい さとる)がシーラカンスから発見したネオ
ダクチロディスクスに関する記述も収められている.
特徴的なのは本の装丁. 本カバーには, 収録されている寄生虫のシールがいくつか貼られ,
本のタイトルを記すインク部分は微妙に盛り上がり, 将棋の盛上駒を思い起こさせる.
手がかけられている装丁である一方で, 使われている紙の質のせいか, チープな感じ(いい意味で)
もして, 手にとって見るだけでもワクワクする作りの本となっている.
寄生虫と聞いてグロい本を想像している人も多いと思うが, 収録されている寄生虫はすべ
てイラストで描かれているので, 必要以上に気持ち悪い画像はなく, 「へんないきもの」
の寄生虫に特化した本だと思ってもらえばたぶん間違いない.
本を読み終わり, 本棚にしまうとき, この本にとりつくであろう紙魚も寄生虫だろうか
と, ふと疑問に思った. 宿主となる本は無生物だから「寄生虫ではない」という考え方
が普通だと思うが, 本を頭脳の延長と考えれば紙魚も立派な寄生虫だな, なんてことを
考えたりしていると, いろんな生き物が寄生虫に見えてきた.
8月14日
ほぼ自分用のメモですが...
Can You Solve the 10 Hardest Logic Puzzles Ever Created?
いまはゆっくり見ている時間がないけど, 後で読もう.
ちなみに最初に出題されている数独の問題は, 問題が発表されたすぐ後に, 居室(前職の)のドアに貼っておいたら,
翌日には答えが貼ってあったという思い出深い問題. solverを公開されているようだから, それも貼っておこう.
Sudoku Puzzle Maker and Solver
8月12日
Schrödingerの生誕126周年ということで, GoogleのロゴはSchrödinger's cat
をデザインしたものになっている.
ロゴを見て思い出したのは学部生のころに岩波新書の「生命とは何か」を読んでいたこと.
ペンローズの「皇帝の新しい心」やプリゴジンの「存在から発展へ」などを読んで, 自分
が物理学に求めているのは何なのかということを考えていた時期があった. 少し背伸びを
していたけれど, そんなことでも考えていなければ, 将来的な見通しに乏しい学部の講義
に堪えることができなかったのであろう.
学部の講義に生物物理というのもあったけれど, アクチンとミオシンによる筋収縮や,
DNA解読を生物につなげて考えることができなかった. 量子脳理論や散逸構造の解析が自
分のやりたいこととも思えなかった. ニューラルネットワークやスピングラスを勉強して
自分のやりたいことは, 計算機を駆使した多体相互作用系の研究だと思うようになった.
あの頃に思い描いていたことがそのままの形ではないにせよ, わりと近い場所にいるのは
確か. まだまだわからないことだらけだけど, 精進あるのみ.
8月10日
学而不思則罔 (学んで思わざれば則ち罔し)
思而不学則殆 (思うて学ばざれば則ち殆し)
学ぶことが多くて, 「思う」ための時間がなかなか取れない.
8月9日
先週のオープンキャンパスでのデモで気になっていたことがあったので計算してみた.
銅管を落下する磁石の運動が速度に比例する抵抗を受ける運動のように見えたのだった.
無限に長い導体の管を鉛直に立て, 管の中心を磁気モーメント$\mathbf{m}$の磁石がモーメント
を管と平行にして落下したときに, 磁気モーメントが受ける力を計算してみた.
計算は面倒くさかったが, 難しい計算はなく, 電磁誘導によって磁石が受ける力の
大きさ$F$は,
$\displaystyle F = \frac{45\pi \mu^2_0 m^2}{512Ra^4}v_z $
と計算できた. $\mu_0$は透磁率, $R$は銅管の電気抵抗, $a$は銅管の半径, $v_z$が磁石の速さである.
(計算チェックをしていないので, 間違えているかも知れません. 上の式を信用しないように!)
これらの変数に実験に近い値を入れてみると, 磁石の終端速度$v_\infty$は,
$\displaystyle v_{\infty} \approx 5\times 10^{-1} \, \mbox{m/s} $
で, 1秒間に50cmぐらい落ちるという評価. それほど間違っていないように見える.
コンマ数秒で磁石の速度がほぼ終端速度に達するという評価もおおよそ実験に合って
いるようだ.
8月7日
昨日のガイアの夜明けで紹介していた形を変えられるスズの食器
が気になっていた. 一年ぐらい前に後輩の結婚祝いに贈ることも
考えていたのだ. スズの食器を選ばなかった理由は金属疲労. 結
婚祝いに贈ったものが「疲労で割れた」なんてことになったら
贈った方も贈られた方もお互い気まずいに違いない.
で, スズの金属疲労について調べてみると, 「すずがみ」というや
はり変形できるという食器があって, この商品の説明を読むと金属
疲労が軽減される工夫がなされているらしい. ということは軽減は
されるが疲労はするということか.
8月4日
オープンキャンパスに初めて参加. 鈴木さんの提案でホール効果と
ネオジム磁石を銅管に通す実験を行った.
見学に来てくれた人たちにはそこそこ楽しんでもらえたと思うけど,
もう少しコンテンツがあった方がよかったかな. 今年でおおよその
雰囲気はつかめたので, 来年の課題としよう.
8月2日
2〜3日前から朝食の時間にクマゼミの鳴き声を聞くようになった。
自宅から離れたところでは聞かないので、なにかの拍子にこの辺に
つれて来られてしまったのだろう。
8月1日
八つ橋が安かったので買ってきた. 「やわらかい」とか「ふわとろ」などが
おいしいの代名詞となりつつあるいま, この堅さはとても貴重.
(昨日の「孤独のグルメ」ではエンガワがとろけていた. エンガワがとろけ
ちゃダメだろう, と思う)
たまに, 生八つ橋をなぜわざわざ焼いたのか憤っている人がいるけれど,
八つ橋はもともと箏の形を模したもの*と考えられているので, 箏の形をな
していない生八つ橋の方こそが実は邪道.
そしてこの八つ橋の由来から, 私の中では八つ橋が将棋の三間飛車とつながっ
ている. 石田流三間飛車を開発した石田検校も, 八つ橋誕生のきっかけとなっ
た八橋検校も, 検校ということで, 検校つながりなのである.
(*:諸説あるらしい)
7月27日
さいたま新都心駅に「新品未使用」の新幹線スーパーこまちが停まっていた.
なぜ「新品未使用」と分かったかというと, パンタグラフが折り畳まれている
上に, 包装がなされていたためである. で, どうやって新都心駅まで来たのか
不思議に思ったのであるが, 車両の先頭には機関車がついていたので, 牽引さ
れてここまで来たようだ.
新幹線と在来線で軌道が違うはずなので, これもまた不思議. 新幹線は標準軌
道で在来線は狭軌なので, 普通に考えると新幹線は在来線を走行することがで
きないはずである. ネットで調べてみると, 在来線で新幹線を輸送するのは非
常に珍しく, 新幹線には仮りの狭軌の台車をつけて走行させているらしい. 調
べてみるといろいろと面白いことが分かるものだ.
7月12日
集中して本を読んでいたときの話.
ものごとに本当に集中しているとき, まわりの何もかもが見えなく聞こえなくなり,
通常とは異なる精神状態になるもので, 今日の私もそうだった.
なにがそうだったのかというと, 本を読んでいて少し読み飛ばした場所があったの
で, 数ページ後ろにもどって, とあるキーワードを探していたのだが, その際,
自分の眼球にgrepを一生懸命発行している自分がいて,
「あれ? grepが効かない...」
としばらく悩んでいたのであった...