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雑記2014

雑多なものの記録

12月30日
鮟鱇鍋が食べたくなったので, 近くの大きめな魚屋で買い物をする.
魚屋は, 正月の食卓を彩る海産物を買い求める客でごった返し, 時に
怒号が飛び交う修羅場と化していた.
買う物だけ買って, 早々に退散.


12月28日
NHKでD-waveの話をしていたので, しばしの間, 視聴する.
D-waveに関係する興味深い話のアレコレが紹介されているの
だけれど, どれも取り扱いが浅く, 視聴者の関心をどれだけ
惹くことができたか見ていてやきもきした.
「なんか凄そう」と思わせて惹きつけておいて, もう一つ,
記憶に残る「理解」を残したい. 必ずしも理工系の素養の
ある人を対象としていないので難しいことなのだけれど,
「なんか凄そう」という印象はその場かぎりの感想であり,
その先がなかなか見えてこないのである.


12月27日
柿ピーというより, 柿ピィーーーって感じ.

kakipeeee
(柿ピーの右奥に置いてあるのはペットボトルのキャップです)

せんべい生地の型抜きに失敗して, 2つ分の大きさになってしまったのだと思う.


12月25日
いま、本学のホームページのトップには次のような言葉が載っている。

 出願に手間をかけるなら
 数式を一つでも多く覚えたい。
 だから、インターネット出願。

これって、「数式は覚えるもの」っていう大学からの受験生への
メッセージになっているわけで、いろいろとまずいよなあ。。。


12月22日
深作変電所での事故により, 本格的な停電を久しぶりに経験する.
演習で学生が問題を解いている最中だったので, 講義に支障は
出なかった. 復電後, 計算サーバを立ち上げてみたところ, 一応,
すべてのサーバが復帰した.
東京電力のウェブに停電情報があるのは確認できたが, 今日の
停電が出ていないのはなぜだろう. もう少し詳しく, 変電所の
事故の内容について知りたいのだが...


12月20日
先日(11月15日), 誘導形電力量計のしくみについて理解したので,
早速, 電磁気学の演習問題にしてみた. A4用紙で一枚程度の簡単な
計算なのだが, 電磁誘導, 交流回路, 渦電流とローレンツ力が絡む
電磁気学の総合的な理解を問う良い問題ができた.
それにしてもこの誘導形電力量計, 単純な仕掛けで上手に使用電力量
を測ることのできる美しい装置だと思う. 誰が発明したのか気になった
ので調べてみると, 開発の歴史もまた面白いということが分かった.

A brief history of meter companies and meter evolution

O. B. Shallenbergerの交流アンペアメーターは, 助手が間違って交流
アーク灯に落としたバネが発明のきっかけとなったセレンディピティ
であること. 誘導形の電力量計の基本原理(誘導電動機)はイタリアの
物理学者Galileo Ferrarisによるものだが, 米国でのその特許は
Nikola Teslaによって抑えられていて, 誘導形電力量計の開発の
妨げになっていたことなど, 調べてみるといろいろと面白いことが
分かるものだ.


12月14日
にわか雨ならぬ「にわか雪」に遭遇. 寒い地域ならともかく,
東京ではめずらしい(実際に遭遇したのは埼玉県だけど).
ウィキペディアの驟雪の項を読んでも日本海側の気象である
ことが見て取れる.


12月13日
川の水面に浮く見慣れない白い水鳥の群れを見かける.
調べてみるとユリカモメということがわかった.
高校の古文の授業を思い出したので、下に引用しておこう。

 さるおりしも、白き鳥の嘴と脚と赤き、しぎの大きさなる、
 水の上に遊びつつ魚を食ふ。京には見えぬ鳥なれば、みな
 人見知らず。渡しもりに問ひければ、
 「これなむ都鳥。」
 と言ふを聞きて、

  名にし負はば いざこと問はむ 都鳥
  わが思ふ人は ありやなしやと

 とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。

---『伊勢物語』「九段 東下り」---

そういえば、先週の物理学実験の講師として来ていただいた榎本先生
からアルミニウムとアルツハイマー病との関係は, 現在では否定され,
BLUE BACKSの『元素111の新知識』の新しい版と古い版で記述が
変わっていることを教えていただいたのだった. 手元のもの(第2版
増補版)を見ると, 確かにアルミニウムの項にアルツハイマー病の
記述はなかった.

これまでアルミの行平鍋を使うことに一種の気持ち悪さを感じていた
のだが, その気持ち悪さをもう感じる必要はないということで, 少し
安心した.


12月12日
23:40ごろ西の空に火球を見る.
色は明るい黄色. 一度うえに上がってから落ちるような軌道を描いた.


12月10日
家のそばでハクビシンを見かける.
丸々と太っていて, エサには苦労していないようだ.
どのくらい太っていたのかというと, ふだん野良猫が下を
くぐっている金網をくぐることができずに, 金網を登り
はじめたぐらい太っていた.


12月6日
おいしいパンが手に入ったので, 久しぶりにバターを手作り
することにした. 手作りにしたのはバターが手に入りにくい
からというわけではなく, 単に手作りの方がおいしいからと
いう理由.

パンの力強い麦の味と作りたてのバターのやさしい味がたまらない.
どんなにおいしいバターでも, 市販のもので作りたてのバターを
上回るものはないんじゃないだろうか. 発酵させたりするのは,
また別かもしれないが...

バターを作り終わった後に残ったホエーは, 食後のコーヒーに
入れて飲んだ. 脂肪が抜けているので, 牛乳の甘みは薄くなり,
コーヒーの苦味を強く感じることができる. 昔, ホエーがいかに
まずいか力説していた知人がいたが, これなら飲めるんじゃない
かな.


11月15日
道路脇の電線から庭にヒモを降ろしている家を見かけ,
気になったので電力メーターがまわる仕組みを調べて
みた. どうもあのヒモは〇〇線を電力メーターの外側に
迂回させる仕組みを担っているようだ.


11月14日
朝の通勤電車内で, バターが手に入りにくくなったことをもって政治批判
をしている人を見かけた. バターが手に入りにくくなったのは困ったものだ
と思うが, 手に入らなければ作ればいいんじゃない, と考えるのは間違って
いるだろうか. 作り方は簡単. ネットで検索すればすぐにヒットすると思う.
注意すべき点は, 牛乳だけで作ろうとするとノンホモ牛乳を入手しなくては
ならないということだろうか. これは, バターより品薄かもしれない.


表面張力ってなんだっけ, と思ってネットで検索.
「そんなことも知らないの? 物理屋さんとして恥ずかしい」と思われるかも
知れないが, 言うほど単純な話ではないということは, 続 物理の散歩道
「表面張力あれやこれや」にも書かれている.

Wikipediaに書かれている説明を読むと, "water sriders"にも言及
してある. 日本語で言うところのアメンボであるが, "water srider"とは
だいぶ優雅な名をつけられたものだ. アメンボの名の由来として「雨坊」と
している人がいるようだが, これはおそらく間違い. 私も子供の頃, 捕まえて
試してみたことがあるが, アメンボの裏側の匂いを嗅ぐと, 少し甘い匂いが
する. この匂いを飴の匂いといってよいかは判断が分かれるところだが, 名の
由来としては「飴坊」の方が正しいのだと思う.

見た目が似た昆虫として, ガガンボの名の由来はどうだろう.
ネットで検索してみたが, 合点の行く説明を見つけることはできなかった.
漢字表記では「大蚊」なので,
「本気」と書いて「マジ」, 「強敵」と書いて「友(とも)」
と読むみたいなものか.

似た音として, トンボの名の由来は何であろうか.
諸説あるようだが, 「飛羽(トンバウ)」とか「飛棒」とか書かれている.
「飛棒」などとあると, もっともらしく見え, 「それだ!」と考えがち
だが, 実はこういうもっともらしい説が一番怪しく, 疑ってかかるべき
話だったりする.

では, ヤンマは?
「山馬」かと思ったが, どうだろう. まったく馬に似ていないと思った人も
いるかも知れない. でも, 馬が竹馬の馬だったらどうだろう.
それも似ていないと思うかも知れない. しかし, 私の言っている「竹馬」が
春駒を指しているとしたらどうだろう. 山の中で「竹馬」が飛んでいると
見立てても, それほど悪くない気がする.
しかし, トンボの古い呼称として「ヱンバ」というのを見て, これが訛って
「ヤンマ」になったような気が今はしている. 「ヱンバ」が何なのかは,
よく分かっていない. 適当な時に調べてみようと思うが, まずは表面張力
からだな...


11月12日
ネットで蟻マシーンなるものを発見して, 「蟻飼ってみたい欲」が
久しぶりに湧いてきた. 子供の頃, 一度チャレンジしたことはあるのだが,
子供だったので, 働きアリをたくさん集めただけで終わってしまった.
集めたアリの多くはすぐに死んだように記憶している.

その後, Antquariumが流行したときにも「蟻飼ってみたい欲」が再燃
したのだが, Antquariumを購買するには至らなかった. ホームセンター
や科学おもちゃ屋などで何度か手に取った記憶はあるのだが, なぜ買わ
なかったのかは憶えていない.

アリといえば, やはり子供の頃, アリジゴクを飼っていた時期もあった.
タッパーに砂を入れて, そこに近所の家の軒下で拾ってきたアリジゴク
を放り込んだ. その日はタッパーの隅でじっとしているだけだったが,
夜の間にアリジゴクが巣をつくるのを楽しみにして床に就いた.
翌朝, アリジゴクはみごとな巣を作っていたのだが, アリジゴクが巣を
つくるのに蹴散らした砂でタッパーのまわりが砂だらけとなり, 親に
叱られたのを憶えている. 小さな体で, あそこまで砂を飛ばすのは想定の
範囲外だった.
アリジゴクにアリを入れ, アリが喰われるのを楽しみに観察していた
のだが, アリは死ぬものの, アリジゴクがアリを食べないのがとても
不思議だった. 実は, アリジゴクはアリを溶かして吸うので, 子供の
目にはアリジゴクがアリを食べていないように見えたのだろう.

同じようなことは大人になってからもあった. 家で育てていたゴーヤー
にアブラムシがたかったとき, アブラムシ対策に拾ってきたテントウ
ムシの幼虫がアブラムシを食べないので, がっかりしたのだった.
日増しに大きくなる幼虫を見て, 草食のテントウムシ(ニジュウヤホシ
テントウ)の可能性も疑ったのだが, アブラムシをよくよく観察すると,
枝に口針を突き刺したまま, 外骨格のみを残して絶命していたのであった.


10月31日
7月3日に言及した野々村さんの論文がJPSJに出版されたよう.

 Y. Nonomura:
 "New Nonequilibrium-to-Equilibrium Dynamical Scaling and
 Stretched-Exponential Critical Relaxation in Cluster Algorithms"
 J. Phys. Soc. Jpn. 83, 113001 (2014).

Acceptされたという連絡はいただいていたんだけど, その後,
忙しさにまぎれて忘れてしまっていた.


10月26日
長袖では暑いくらいの陽気で, 公園ではセミの鳴き声を
聞くこともできた. 昨年は10月9日から1週間ほどセミの
鳴き声が聞こえ, ずいぶんと季節外れな印象を受けたが,
今年はそれを上回って季節外れということになる.

やや公表のタイミングを逸してしまったが, 品岡さん, 求先生との
共著論文が出版されました. 下の7月25日に書いたarXivの論文です.
 H. Shinaoka, Y. Tomita, and Y. Motome:
 "Effect of magnetoelastic coupling on spin-glass behavior in Heisenberg pyrochlore antiferromagnets with bond disorder",
 Phys. Rev. B 90, 165119 (2014).

ついでと言っては何だけど, 私の単著論文も一月ほど前に
PREから出版されたので, 一応ご報告.
 Y. Tomita: "Finite-size scaling analysis of pseudocritical region in two-dimensional continuous-spin systems",
 Phys. Rev. E 90, 032109 (2014).
2D RP2模型は有限温度相転移があるというのがこれまでの
通説で, 私自身も, GPU上のクラスターアルゴリズムに慣れ
ておこうぐらいの気持ちでこの研究を始めたのだが, いざ
データを取って解析してみると, 妙な違和感があったので,
あれこれやっている内に相転移は無いという結論に落ち着いた.

その「妙な違和感」というのが, 断言はできないのだが,
たぶんZ2渦のbinding-unbindingのクロスオーバーがあって,
そのクロスオーバー温度で相関長がグッと伸びるけど, 実は
相関長は有限, ということだったんだと今になって思う.

それで論文では, 2次元連続スピン系ではそういうクロスオーバーを
見せる系はたくさんあって, そういう見かけの振る舞いに引っかかる
人が多いので新しい解析方法を考えました, ということを書きました.
2D XY模型, 2D Heisenberg模型, 2D RP2模型のデータを
並べてみると, 2D RP2模型が有限温度相転移していないということと,
ナイーブな解析をするとこれは引っかかってしまうよね, という
ことがよく分かっていただける内容になっていると思います.

それと, 上の論文でも使っているカーネル法を少し拡張・改良した
という内容のメールを原田さんからいただいたので, これもリンクを
貼っておきます.
 K. Harada, "Kernel Method for Corrections to Scaling",
 arXiv:1410.3622
先の秋の学会で原田さんが発表された内容なのだけど, こうして
文字でまとめていただけると大変ありがたい.


10月10日
家の前でフェレットらしき動物が走っているのを見かけた.
鼻の先から尻尾の先まで1mほどはあっただろうか.
ネコぐらいなら餌にしそうな大きさである.
体長だけで判断すると, ハクビシンの見間違いと思われる
かも知れないが, ハクビシンは何度か見たことがあるので,
その見分けはできる. 顔の骨格, 脚の付きかたがまったく
ちがう.
野良フェレットはたぶんめずらしいので, 繁殖する心配は
ないと思うが, 生活能力は高そうに見えたので, 逃げ出す
(あるいは捨てられる)頭数が増えてくるとちょっと心配で
ある.


10月8日
昨日取り上げた, 青と赤の違い.
昨日発表された今年のノーベル物理学賞も青と赤の違いが大きな意味を持っている.
Wikipediaによると, 赤色の発明が1962年, 青色の実現が1989年である.
赤から青まで27年. どのような研究史があったのかは知らないが, 熾烈な競争が
長年にわたって続けられたのだから, 成功の影に埋もれた研究もたくさんあった
のだろう.

発光ダイオードの原理については, 物理学実験で半導体を扱っていることもあり,
一応は理解しているのだが, 青色LEDの実現および実用化がなぜこれほどまでに
困難であったのかは残念ながら理解していない. せっかくの機会なのでこの疑問を
解決したいなあと思っているのだが, ネットでささっと調べたかぎりでは,
非専門家にもわかるように解説しているサイトはないようだ.


10月7日

  しら鳥は かなしからずや
  そらの青 海のあをにも
  そまずだゞよふ

太田先生の『電磁気学の基礎I』の冒頭で紹介されている
若山牧水の歌である. この歌につづけて

  天の蒼蒼たるは其れ正色なるか

と『荘子』を引用されている.
なぜこんなことを言い出したかというと, 明日は天気が
よければ皆既月蝕が観測されるはずである. つい短絡的に

  月の赤赤たるは其れ正色なるか

などと言ってみたくなったりするが, 青と赤の違いに
ついて考えながら月蝕を観測するのもまたおもしろいの
ではないだろうか.


10月1日
今年もまたカンタンが鳴いている.
院生だったころ, 高尾山までカンタンの鳴き声を聞きに行こうかと
迷って, 結局行かなかったのだが, それは正解だったのかも.


9月29日
湿った岩石を下からゆっくりとコンスタントに熱したとき, 岩石の動きの
時系列として期待されるのは, どのような動きだろうか.

  1. 水分が水蒸気となり, 水蒸気圧で脆い岩盤が上へ押し上げられる.
  2. 岩盤は, 薄いもの, および, その周囲とのコンタクトが緩いものから動き始める.
  3. 岩盤が一定程度動くと, 薄い岩盤, 脆い岩盤の動きは周囲の固い岩盤に封じられ,
    岩盤の動きは不活発になる.
  4. 岩盤の動きが不活発になることにより, 岩盤への圧は高まりつづける.
  5. 岩盤への圧が固い岩盤の臨界を超えたところで, 岩盤は一気に崩壊し, 土砂が噴き上がる.

という素朴な考えを抱いたのだが, 上の考えが正しければ,
火山性地震が弱まった後がもっとも緊張を要する時間となる
わけで, 報道を見聞きした範囲では, 火山性地震弱まったことで
安心していたようなので, 実際には上のような考えは素人考えで,
取るに足らない浅知恵なのだろう.


9月27日
御嶽山の噴火と5月3日の群発地震との関連が気になったので
ネットで調べてみた.

 2014年5月の地震活動の評価(地震調査委員会)

5月3日の群発地震は御嶽山の北, 燃岳あたりを南端としてほぼ真北に
地震源が集中している.

 燃岳の噴気や地殻変動に特段の変化はないことから、火山活動との
 直接の関連はないと考えている。(5月16日発表の資料)

今回の噴火との因果関係は不明だが, 上記の群発地震で何が起きて
いたのか気になるところではある.


9月24日
物理学実験の初回のテーマは「長さの測定」だ.
ノギスマイクロメータを用いて円柱の体積を計測し, 実験における
データの平均値や誤差について実地で学んでもらう, いわばOJT研修である.

面白いのは窪み付き円柱の窪みの体積をノギスで求める過程.
ノギスの使い方は主尺と副尺の読み方までを教え, 後は実習で学んでいく.
ジョウ(Outside large jaws)を使うのは誰でも分かる.
内径はクチバシ(Inside small jaws)を使うのだが, これに気がつかない
学生は結構現れる.
ほとんどの学生が気がつかないのはデプスバー(Depth probe)の利用方法.
窪みの深さを「どうやって測るのですか」というのは毎年のFAQなのだが,
自分で創意工夫をして実験することを大切にしているので, スタッフは簡単には
教えない. 最初は,
 「頭を使って測り方を考えなさい」
と答えるが, なかなか正解にたどり着けない学生には,
 「頭だけでなくお尻も使いなさい」
とヒントを出す教員もいる. Jawsとクチバシの反対側にあるから「お尻」
うまいこと言うなー, と思うけど, 穴から伸び出てくるデプスバーにまで
想像力を広げるのは噴飯物なので注意が必要だ.


9月20日
決められた制約のなかで, 自分の技量と相談しながら,
人々が魅了され, 聞き入るような新しい世界を描き出す.
落語と音楽はよく似ている, と感じた一日であった.


9月18日
数日前に日本人の姓について人と話をした.
個人的な印象としては職業の名前が少ないなあと思う.
Carpenter, Charpentier, Zimmermannはいても大工という
姓というのは人づてにでも聞いたことがない.
(ネットで調べると, 大工姓は名字ランキングで7052位らしい)

日本人の姓は地名がルーツのものが多いから, 英語に訳すと同姓の
人がいることが多いという話もあった. たしかに富田はRichfieldと
対応があるし, そうかなとも思うけど, 冷静に考えてみると対応が
つくのは案外少ないような気もする.
ちなみに数学者の矢野健太郎は自分の研究分野(微分幾何学)と自分の
姓がうまく符号していることを外国の数学者に話した時, あまりにも
話が出来過ぎてて信じてもらえなかったそうである.

日本の姓で多いのは佐藤, 鈴木, 田中, 高橋だが, どれも英語との
対応はなさそうだ. 田中氏, 高橋氏の多くは地名との対応がありそう
だが, 佐藤氏は藤原氏と地名との合わせたもので, 鈴木氏は鈴を下げた
木を鈴木と呼んだのが由来らしい.

佐藤が藤原氏と地名の組み合わせというのは前に聞いたことがあって,
そのとき令制国の名との組み合わせでたくさんの姓がつくれることを
確認したことがあった. もう一度やってみると,

 伊藤 (伊勢, 伊予, 伊賀, 伊豆)
 近藤 (近江)
 武藤 (武蔵)
 常藤 (常陸)
 山藤 (山城)
 尾藤 (尾張)
 紀藤 (紀伊)
 遠藤 (遠江)
 加藤 (加賀)
 阿藤 (阿波)
 安藤 (安芸, 安房)
 周藤 (周防)
 佐藤 (佐渡)

後藤, 斉藤(齋藤, 斎藤, 齊藤), 工藤, 権藤, 江藤, 進藤, 新藤など
漏れはたくさんあるが, 藤のつく姓に地名との強い相関があることを
感じさせるには十分であるように見える.
また逆に令制国の名と組み合わせた姓が実在しない姓があるようにも見える.
藤原氏の勢力図と藤のつく姓の分布を重ね合わせると何か面白いことが見える
のではないかという妄想も湧いてくる.


9月5日
今朝放映されていたNHKの「動物の赤ちゃん」を見ていて,
小さな違和感を感じた. エビの赤ちゃんとして小エビを紹介
していたが, それは蛙の子は蛙(ことわざの意味でなく)と
教えるようなものじゃないだろうか.

 カエルの子はオタマジャクシ
 エビの子はノープリウスかゾエアもしくはフィロソマ

と教えるのが正しいと思うのだがどうだろうか.
(言いがかりに近い, 細かい話だとは自分でも思うけど...)
ちなみに小エビの状態を英語では"juvenile"と呼び,
これは少年(少女)の意であって, 赤ちゃんの意味はない.
(大友克洋の漫画AKIRAでドブロフスキー博士らが結成した
プロジェクトチームの名は"Juvenile A"であった)


9月1日
次の出張のホテルの場所をGoogle mapsで確認すると,
またしても私の宿泊予定が地図に記入されている.
先週利用したホテルとこのホテルは全く関係がないので,
この「サービス」は仲介業者の仕業らしい.


8月30日
大宮キャンパスの雑木林でタマムシを発見.
間近で見ると結構グロい. 弱った死にかけのGを思い起こさせる.
奇形なのか, 左右で羽の長さが異なっている.
短い方の羽の方は腹が隠れずに見えているので, これもGを思い
起こさせる. 美しい羽を持っているだけにとても残念.


8月28日
Andrew J. BellさんによるElectromechanical coupling coefficient
の話を聴く. 前からいくつかの論文を読んで気になっていた人なのだが,
予想通りと言えば予想通りの人だった. これから微視的な方の研究にシフト
していくと言っていた(出版論文も実際にシフトしているように感じる)ので,
今後の研究も楽しみである.

夜は燃料を入れながら今後の研究について語り合う.
私がいま気になって調べていることと, 他のメンバーの興味が一致して
いたのが面白い. 話を聴いていて, ぼんやりとしていた先の目標が
きれいに見え始めてきた. ここでもう少し中長期的な目標を見直して,
近い将来, お互いの結果で研究をブーストできるように準備しておこう
と思う.


8月27日
西松さんによるferam, 米田さんによるPDFguiのレビューが面白かった.

feramは前から使ってみようと考えていたのだが, これまでタイミングが
合わず, 触れることなく時間が過ぎ去っていた. 今回は, BaTiO$_3$のhysteresis loop
を描くだけの簡単なものだったが, feramの計算の流れはわかったので,
今度, お遊びの計算からはじめてみようと思う. ただ実は, feramを使う前の
ABINITによる準備計算が私にとって一番の障壁になっているので, そこを解説
してくれるともっとありがたかった. しかし, ABINITでつまづいたときには
西松さんに聞くことにしよう.

数値計算では粒子位置をデータとして持っているので, PDFguiを使う機会はあまり
ないと思うのだが, 米田さんの話はPDFguiを使う以前のSPring-8での実験の詳細
などが大変興味深く, また面白かった. 私が前職で所属していた物質設計評価施設では,
毎月の定例会で, スパコンを含むもろもろの設備の担当者による報告があったのだが,
米田さんの話はそのころに聞いた話(主にぼやき)と共通するものがあり, 昔を思い出す
と同時に, 設備担当者と利用者との間の意識のズレはどこに行っても面白い話(面白がって
はいけないのだが)の元になっているのだなと感じた.
実習において, 入力パラメータが正解から遠いとPDFguiによる解析が不安定になると
聞いて, どのようにして解析をしているか興味があったのだが, いまソースコードを
ダウンロードしてきて中身を読んでみるとLevenberg-Marquardt法を使っているようだ.
(まじめにソースを読んでいないので間違っているかも知れない)
もっと柔らかいソルバーも用意して, ユーザがソルバーを選べるようにすると,
幸せになる人が増えるかもしれない. ただし, フィッティング作業は装置ごとの
特性ともからむそうなので, 不特定のユーザがフィッティングできるようになると
弊害もあるかも知れない.


8月25日
福岡大学で開催の国際会議に出席する.
宿は天神の外れに取った.
天神というと, 天神愛眼のテレビCMを思い出す.

 ♪ メガネを買うなら服を買え〜

という, とてもシュールなCMだと思っていたのだが,

 ♪ メガネを買うなら福岡へ〜

と言っていることに気がついたのはごく最近の話である.


8月23日
出張前にGoogle mapsで宿泊先ホテルの位置を確認しようとすると,
宿泊先ホテル名の下に私の宿泊日程がGoogle mapsに記載されている.

Googleが私の個人情報を抜いてMapに記載したとは考えにくい.
たぶん, ホテル予約の仲介業者かホテル側の「サービス」なのだと
思うけど, このサービスはちょっと気持ちが悪い.


8月22日
研究室を出入りするガラス扉にスズメガの一種, モモスズメが留まっている.
ガラス越しに観察すると, つぶらな瞳がとてもかわいいが, 顔に向かって飛んで
こられたら叫び声を上げるか固まって動けなくなるぐらい大きい. なんたって
蛾だしなあ. そういえば先日, オオスカシバが顔に当たりそうになったときも
びっくりした. 子どものころはよろこんで捕獲していた蛾なのになあ.

この扉を開けないと研究室の出入りはできないので, 扉をゆっくりと開ける.
こちらに向かって飛んでくる気配はなさそうだ.


8月11日
カタツムリが壁に描いた曲線を見て, 曲線を原点に写す写像について考える.
純粋な確率過程に比べると, 生物が描く曲線はやや退屈なものとなる.
では, 群れで動いている生物だったらどうだろう. こちらはひとつの粒子が
たどる軌跡だけでなく, 粒子をとりまく他粒子の速度も相互作用に含まれる
から, 存外おもしろい問題になるような気がする.

と書いた後で, こんな論文の存在を思い出した.
M. Vergassola, E. Villermaux, and B. I. Shraiman,
```Infotaxis' as a strategy for searching without gradients'',
Nature 445, 406-409 (2007).
条件を上手に入れることができれば, 一個体の生物の動きでも面白いものがあるかも知れない.


8月7日
``Is GPU Computing Effective Enough?''というタイトルでNIMSでセミナーをさせて
いただいた. 昨年の駒場で行ったセミナー「GPU計算は量質転化をもたらすか?」の
内容を数値計算を実際に行っている人向けに少し改変して講演した.

改変したのは正解だったけど, いかんせん, 準備不足だったのが悔やまれる.
GPUを利用した計算の雰囲気(実際には自分の手を動かさないとわからない)を
伝えたいのだけど, 技術的な解説抜きで説明はできないし, かといって, 技術的
な細部にこだわると話の筋がぼけてしまう. ``Hello World''的な例示ができると
いいのだけど, これは今後の課題に残しておこう.

小村さんと岡部先生のGPU向けクラスターアルゴリズムの紹介から, 現在一般に
使われているアルゴリズムを見直すことの重要性については, 繰り返し説明する
機会もあって, 前回よりもメッセージを伝えることができたように思う.
MPI並列と違い, ひとつの板にたくさんのコアが並んでいることによって,
CPU上では愚鈍なやり方がGPU上ではスマートな解法となるのは, GPUの今後の
可能性を考える上でとても重要な鍵だと私は考えている. ``More is Different''と
主張するためにはもっと実例を増やすことが必要だが, クラスターアルゴリズムの
たった1例だけでも, その面白さは分かってもらえたのではないかと思う.


8月6日
テレビのチャンネルを変えるとき, ある年齢以上の人たちは「チャンネルを回す」
と言うことがあるけれど, これはチャンネルの切り替えがダイヤルで行われて
いたことの名残である.

我々の業界で, 計算機を使って数値計算をするとき「計算機を回す」と言うのは
なんでだろう. 時間を遡って考えてみると, 最古の計算器は日時計らしいが,
太陽は周(まわ)るのであって, 回すのではない. そろばんは, 弾くのであって,
これまた回すことはない. もう少し時間を下ると...

手廻し計算器はどうだろう.
手廻し計算器はまさしく計算器(のレバー)を廻すことによって計算を実行する
機械である. クルタ計算機を見ると特に, 「計算器を回す」という表現がとても
しっくりくるように思う. 上のチャンネルの話のように「そろばんを弾く」から
「計算器を弾く」という表現の変化は無理がある. 「計算器が結果を弾き出す」
ことはあっても, 人は計算器を弾かない. だとすれば, 計算器の普及と同時に
「計算器を回す」という言い回しができたと考えてもよいように思うのだが,
実際にはどうだったのだろうか.


7月28日
M. Žukovičさんとの共著論文がJPSJに掲載されました.

Y. Tomita and M. Žukovič,
``Incommensurate Short-Range Order in $S=1$ Triangular Lattice Ising Antiferromagnet'',
J. Phys. Soc. Jpn. 83, 083001 (2014).

論文の内容については5月20日に少し触れたので, 今日は「教えに背いた」ことに
ついて少し弁明したい.

私が助教(当時は助手)として物性研に赴任したとき, 髙山先生に言われたことは,

 同じ研究を続けていてはいけない, 物性研では新しいことに挑戦しなさい.

という内容のことだった. それで, 「長距離相互作用するスピン系」を挑戦相手と
決めて, 長いこと論文が出ない辛い時期を送ったのであった. 福井さんと藤堂さんが
O(N) Monte Carlo法を出してくれていなかったら, たぶん私はこの業界からは消えて
いたと思う. また同時に, 当時, 確率変動法確変を起していい気になっていたままなら,
やはり消えていたとも思う.

話がやや横道に逸れているが言いたいことは, 大変なんだけど, 研究者というのは,
蛸壺に閉じこもることなく変化しつづけることが大事で, 研究対象を広げていくことで,
物理のまん中もしくは最前線が今どこなのかを意識できるようになり, 自分の研究を客観的
に位置づけた上で仕事できるようになるのだと思う. ここに書いたことは私の勝手な解釈だが,
これは髙山先生の教えとして私が大事だと考えていることである.
(そんなことは気にせず, 俺は俺の道を行く. というのも格好いいと思うけど,
そんな気負いが独りよがりになったとき, 目も当てられない状況になる)

で, ここでやっと本題に戻ると, 「お前は言っていることとやっていることが違う」と
いう状況の弁明になるわけで, それは, 5月20日にも書いたように, Žukovičさんと
話をしているうちに, 今回の論文で提案しているスピン模型とそこから得られる結果の
おもしろさがほぼ一瞬にして「降りてきて」しまい, そういう年の功的な研究もいいかなと
思って論文にしてしまった次第です.

これまでの研究路線とは少し外れた研究も進めているところで, これはまだ表には出せないの
ですが, これまで通りにやっていればいいや, と思ってるわけではないということをちょっと
ここで言いたかった, ということです.


7月25日
汗がサウザー様のようだ.
「退かぬ!! 媚びぬ 省みぬ!!」


は置いといて,
パイロクロア反強磁性ハイゼンベルク模型におけるスピン-格子結合(双2次相互作用)の
重要性に関する論文原稿を品岡さんがarXivにあげてくれたのでご紹介.

H. Shinaoka, Y. Tomita, and Y. Motome:
``Effect of magnetoelastic coupling on spin-glass behavior
in Heisenberg antiferromagnets with bond disorder'',
arXiv:1407.6158.

この話の大筋はPRL 107, 047204 (2011)で示されている(日本語による解説はこちら)
のだけど, 今回はPRLで示した筋をもっと深く詰めていくと, PRLで示した以外の現象に
ついても, 我々が提唱しているスピン模型が実験をよく再現しているようだ, というお話です.
FCとZFCで$m/H$を計算してみたり, 緩和の様子を見てみたりなど, 新しい結果が
含まれているわけだけど, とりわけ$\chi_3$のデータは, ほほぅと思うようなおもしろい
結果(予想した通りの結果なのだけど)を示しています.


7月23日
今日で前期の講義は終了. あとは期末試験を残すだけとなった.
今日は来週の期末試験に備えて, 学生には過去の試験問題を解いてもらった.
試験時間の間, 私は長いことペンディングになっているいくつかの問題
について考えていたが, アイデアがいくつか浮かんだだけで問題を解くこと
はできなかった.

物理の問題を解くことはできなかったが, ここ数年気になっていた謎のひとつは
解くことができた.

NHK大河ドラマなどで時代考証をされている学芸大学の大石学先生が誰かに
似ていると, ずーっと気になっていたのだが, それがN大学のK先生にそっくり
なのだということに今日の試験時間中に気がついた. いま居室に帰ってきて,
Googleの画像検索で確認すると, 髪型はかなり違うのだが, 顔はやっぱり
よく似ている. 試験時間中のあの「わかったぁ!!!」感は嘘ではなかった.

ずーっと気にかかっていることというのは不思議なもので, 気になっている
とき(テレビで大石先生をみているときなど)には答えは分からず, 考えていた
こと自体を忘れるような変なタイミングで, 答えはふらりと舞い降りてくる.
この現象を逆手に取って, 物理の問題もたくさん解けると良いのだが。。。


7月17日
とある豪邸がいかに豪邸であるか, ということの証左として, 「となりに家が
32軒ほどある」という話を今日聞いた. 四角い敷地の一辺にだいたい8軒ほどの
家があるということらしい.

ちょっと考えてみたのだが, これって言葉から受けるインパクトほど, すごくは
ないはず. だって, 高級住宅地には豪邸が隣り合って並んでいるから, 豪邸の
となりには豪邸が4軒並んでいるはず. 豪邸8$\times$8分の豪邸に住んでいる可能性も
捨てきれないが, そんなことすれば街路はその超豪邸によって遮断され, まわりの
豪邸に住む人たちはその状況をあまり良くは思わないだろう.

だから, 「となりに家が32軒ほどある」という状況は, 庶民的な住宅地のまん中に
庶民的な一軒家8$\times$8分の豪邸に住んでいる可能性が高いと思う.

どんな状況なのか, 具体的に思い浮かべたいと思ってGoogle mapsで大学の
まわりを見ていたら, 住宅地内にある公園の一辺にだいたい8軒ほどの家が
並んでいるようだ. だから冒頭の豪邸に住んでいる人は住宅地のまん中の公園
ぐらいの広さの敷地に自分の家を建てて, 住んでいる可能性が高そうだ. でも,
それって豪邸だとは思うけど, 都心に一軒家を建てるとか, 隣もまばらな郊外に
広い家を建てる方が健全だと思うのだけど...

だんだんと下衆の勘繰りをしているような気にもなってきたので, この辺でやめておこう.


7月16日
数年前からお付き合いのある津本さんが作家の津本陽さんの親戚と
いうことをこのあいだ知った. 言われると, 確かに体格など似ている
気がする.

『下天は夢か』を読んでいたときは, 若気の至りというやつで, 信長っぽい
振る舞いを繰り返していた. まわりの反応を見ながら, 自分は信長タイプでは
やっていけないということを覚ることができた.

私にとって『下天は夢か』はたくさん読んだ歴史小説のひとつだが,
南方熊楠の生涯を扱った『巨人伝』は, たくさん読んだ学者の伝記の中でも,
とりわけ面白かった小説である. 私が粘菌について初めて知ったのは,
ナウシカからではなく, 熊楠に関わる記述からであったと記憶している.

粘菌が面白いのは, まわりに餌があるときは単細胞のアメーバのように
振る舞うのであるが, ひとたび飢餓状態がやってくると, 単細胞のアメーバ
たちが一か所に集まってきて, 多細胞生物のように振る舞うことにある.

何の本で読んだかは忘れてしまったが, これらの振る舞いが, 個々の粘菌が
出す化学物質の濃度に作用されていることを知ったとき, 生命現象を知り
たければ生物学を勉強していてはダメで, もっと本質的な, 基礎的なことを
学ばなければならないと考えたことを今でも憶えている.

いまでは, すっかり生命現象から離れてしまったが, たまに生物物理学の
論文を読むと, 自分が生物を扱うにはまだ時期尚早のようにいつも感じる.
前にも書いたことであるが, 筋肉やナトリウムポンプ, ロジスティック写像
による生物の個体数の変動の記述などは, 私にとっての生命現象ではないの
だなあ, とも思う.

しかし, かと言って, このまま物性物理や統計物理だけやっていても後悔を残す
のは確実で, シュレーディンガーのようにヴェーダーンタ哲学でもやってみたいと
思うのではあるが, そんな格好のいいことをやってのける知力の不足を託つこと
ぐらいしか私にはできないのである.


7月11日
昨日の夜, 散歩をしていると, コンビニ弁当の黒いトレーが
道路脇でモサモサと動いていた. なにか小動物がトレーの中に
閉じ込められているのだろう, と思って近づいてよく見ると,
それは弁当のトレーではなく, あの高級食材であるところの
スッポンそのものであった.

安房直子の『海の館のひらめ』をふと思い出したが, いま目の前に
いるのはヒラメではなくスッポンで, メルヘンの要素はほとんどなく,
あえて言えば川原泉っぽいが, え〜っと, そういえば主人公にしか
見えない亀の話があったっけ? でも, 目の前のスッポンは現実の
スッポンだよなー, などと考えながら, 家に持ち帰って食べることも
一瞬考えたのだが, スッポンのさばき方を知らないし, 何かの拍子に
噛まれるのも嫌だし, 何よりこの道路の下はドブ川だったりする.
それで, ドブ川に帰してやろうともしたのだが, 甲羅をつつくと長い首が
にゅーっと伸びるので, 結局, 放置したままさようならをすることにした.
車に轢かれるなどのもったいないことになっていないと良いのだが。。。


7月8日
近しい人の訃報を聞く.
先日, 狭くなった心臓の血管にバネみたいなものを入れたと
聞いたから, 冠動脈にステントでも入れたのだろうか.
術後の気分がすぐれないから入院を1日延ばしたとも聞いて
いたが, このようなことになるとは思いもしなかった.
とても残念でならない.


7月3日
野々村さんからクラスターフリップによる非平衡緩和過程を
調べた論文の原稿をいただく. 転移点直上ではベキ緩和する
ものだと思っていたし, それっぽいデータも出ていたのだけど,
ちゃんと調べてみるとどうもstretched exponentialで緩和
するらしい. arXivに上がっている原稿を見てもらえれば分かる
ように, 異なるシステムサイズのデータを使って有限サイズ
スケーリング解析をしてもバシッときれいにstretched exponential
のふるまいが出てくる.

クラスターフリップに使うクラスター, 特にFortuin-Kasteleyn変換
から出てくるクラスターと静的な物理量との対応関係については,
いろいろなことが分かっているけれど, ここにきて動的な性質との
関係も議論できる可能性が出てきたわけで, 解析的に何か言えること
があると, 物理的な理解が深まるだけでなく, 数値計算への応用も
期待でき, 今後の進展がとてもたのしみなのである.

Y. Nonomura:
``A new non-equilibrium to equilibrium dynamical scaling and stretched-exponential critical relaxation in cluster algorithms'',
arXiv:1407.0121.


7月2日
単純作業の繰り返しをしていたら, 時間が数秒跳んでいた.
跳んだ時間の分の作業は進んでいたが, まちがいが多く結局やり直した.
う〜む, キング・クリムゾンに時間を消されたかな.


7月1日
下記のウェブページを参考にしてbstファイルに手を入れる.
ファイルをゆっくりいじっている時間はなかったので, bstファイルの
理解は後回しにして, 小手先の修正で凌いだ.

$\LaTeX$の家「bstファイルのカスタマイズ」



6月30日
学生に教えることは難しい. 「教え上手な先生」とはどのような先生を指すので
あろうか. ちょっとした質問なら, 学生のわからないところを瞬時に察知して,
ツボをおさえながら理解しやすいように説明することはできる.
しかし学問の多くの現場では, 自分の手を動かして, 悩んで, 間違えて, 行きつ
戻りつして苦労して手に入れたものが本当の理解であるはず. であれば,
「教え上手な先生」とは結局のところ, 「教えない先生」ということなのではない
だろうか. 学習から得るたのしさとは, わからなかったことがわかるようになること
であり, それは人から与えられるようなものではない. 学習のたのしさを伝えつつも,
学生の学習のためなら教えることを拒む堅固な意志(「先生」というのは, 本来,
「教えたがり」だから, 教える誘惑に耐える強い意志が必要なのです)を持った人こそ
が本当の教え上手な先生なのではないだろうか.

教育のあり方について真剣に悩んでいる同業の人たちを見ると, 世間的な「良い先生」像
が学生の学力向上には不適であることに気づき悩んでいるようで, 学生のためを考えれば,
世間的な意味での「良い先生」にはなる必要はないと言いたくて, 自分のガラにもないこと
を書き散らかした次第である.


6月28日
15年ほど前に台湾で買ったCDを久しぶりに聞くと, 当時のことをいろいろと
思い出した. 初めて海外にひとりで放り出され, 日本に帰る1ヶ月後まで無事で
いられるかどうか, どきどきしながらホテルに着くと

 「ワタチ 知っているか?」

といきなりフロントで聞かれる. えーっと, 台湾来たの今日が初めてだし,
あなたのこと知ってるはずないでしょ, と思って返事しようとすると,

 「ワタチ 日本人ョ」

と言う. う〜む, そのたどたどしい日本語で「ワタチ 日本人ョ」と言われ
ても説得力ないのだけど, ここは認めておいてあげた方があとあと面倒がなく
ていいのなかぁ. と迷っていると, 私を空港からホテルまで送り届けてくれた
蔡さん(父の友人)がこのやりとりを見かねて中国語でフロントの人と話し始めた.

 「裕介さんの向いの部屋はワタチさんという日本人らしいよ」

というわけで私の向いの部屋に日本人がいて, やはり清華大学の研究会の参加者
だから会ってみれば, という親切な提案なのであった.

いただいた提案通り会ってみると。。。
ワタチさんとは誰あろう, 東大の和達(ワダチ)先生なのであった.
あぁ, そうだった, 中国語は濁音が弱いんだったと変に納得して, フロントの
人の親切に深く感謝したのであった.


6月22日
今年の2月, 散歩中にGoogleのストリートビュー撮影車と遭遇したのだが,
今日, 自分の散歩姿がばっちり写っているのを確認した. 撮影車は一帯の
道路を繰り返し舐めるようにして走っていたので, 何度となく撮影車とすれ
違ったのだが, ストリートビューに映り込んでいたのは1箇所だけだった.


6月20日
サッカーのワールドカップの影響だろう, 往きの電車がかつてなく空いていた.
1限目の講義は大丈夫だろうかと心配したが, まずまずの出席率. ワールドカップ
より面白い講義してるもんね. と書いてみて, 心の中で大ブーイングが鳴り響いた.
う〜む, 自分に嘘をついているつもりはないのだが...?


6月19日
佐々木さんに久しぶりに会う. と思ったが, 実は春の学会で会って
いたのだった. 研究の話は全く出ず, 私学の物理教育について議論する.
程度の差はあれど, 問題の本質はだいたい同じなのだと感じる.
とりあえず, 私学教員として数年だけ先輩なのをいいことに, 先輩風を
吹かせるだけ吹かせておいた. 数年もすれば, 逆に説教を受ける立場に
なっているかもしれない. まあ, 佐々木さんが人に説教を垂れている姿は
あまり想像できないが...

夜は物理学実験で講演していただいた講師の先生を囲んで赤羽で懇親会.
赤羽の猥雑さは, 軍都赤羽の姿をそのまま見ているように感じるのはなぜだろう.
帝都とはほど遠いが, 魔人, 加藤保憲がその辺に潜んでいても違和感はあまり
無いように思う. かつての立川駅南口は, 子供心ながらにも怪しげな店舗や,
お世辞にもこぎれいとは言えない労働者風の人たちであふれていたが, 今は
すっかりきれいになり, 昔の面影はほぼ消え失せてしまった. 赤羽ももちろん,
昔に比べればきれいになったのだろうと推測するのだが, それでもそこかしこに
昔の面影が見え隠れしているように感じるのである.


6月14日
Ernst HaeckelKunstformen der Naturを眺める.
珪藻の姿形を見ていると, 生物学も物理学の範疇になるのだなあ, などと
考える. 生物は淘汰圧を受けることによって, 生存競争を生き抜くための
最適化を行うことになる. 個々のいきものが最適化を意識することはないが,
世代を重ねて, 生存により有利な個体が多くの子孫を残すことで, 個々の
いきものからは想像できない数理がはたらいてくるのである.

一定以上大きな生物の進化の過程からは, あまり物理学を感じない. たぶん,
体が大きくなると, 物理的な相互作用よりも, 生物的な相互作用の方が重要
になってくるからじゃないかと思う. 物理学者の中には一定数, 生物的な相互
作用の弱い人たちがいるので, 彼ら/彼女らが生存競争を勝ち抜いた暁には,
物理的な相互作用によって最適化された大きないきものを見ることができる
かもしれない.

話がそれた.
珪藻を見ていると, 小学生の頃, 古生物学者になりたかったことなども思い
出した. 山から山へ, 誰も見たことの無い新種の化石を探し歩いて生活する
将来を想い描いたりしていた. 山の形はだいぶ変わったが, それでも新種の
石が出そうな山を探している今の生活は, 小学生が想い描いた将来とそれほど
変わらないのかも知れない. の善し悪しが研究を左右しているのもおもしろい.

北海道で産出する異常巻きアンモナイトの話などを読むと, 物理を選んでよかったな,
と思う. 生物学を選んでいたら, きっとこの手の話の理解は, 今の自分の理解より
まったく違うものになっていただろうから. その逆の, 生物学を選んでよかった
と思うこともあったかもしれないが, なんとなく自分の性格などを考えると,
才能はともかくとして, 物理を選んでよかったと思うのである.


6月10日
野々村さん来訪. 立場的には私の方から伺うべきだったのだが, 大宮まで
来ていただけるということで, お言葉に甘えさせていただいた.

この間の学会で話された発表の詳しい内容をお聞きする.
学会で話を聞いたときには, にわかには信じられない内容だったのだが,
あれから自分でも同等の計算をしたことで, 今は野々村さんの主張が正しい
ことが頭の中だけでなく, 実感として理解できている.
後は, 解析的に野々村さんの結果を導き出せるとうれしいのだが...


6月5日
お昼休みにD-Waveという商用量子コンピュータの話を聞いたので,
自分でも少し調べてみた.

 D-Wave Systems (ウィキペディアの記事)
 東工大の西森教授らが原理を考案 - Googleが導入した量子コンピュータ (マイナビニュース)
 D-Wave uses quantum method to solve protein folding problem (phys.org)
 Controversial quantum computer aces entanglement tests (NewScientist)

「量子コンピュータ」と聞いて, 通常思い浮かべるものと違うけど,
興味をそそられる面白い話であることには違いない. NatureやPRB
の論文も時間のあるときに読んでみよう.


6月2日
壁に甲虫がとまっていたので, よく見てみると, キマダラカミキリだ.
それほど珍しい昆虫ではないようだが, 子供の頃の家の周りにはゴマダラカミキリ,
シロスジカミキリ, ビロウドカミキリ, クロカミキリ, アオカミキリぐらいしか
いなかったので, 個人的には珍しいカミキリムシなのである.


5月30日
首都圏と聞いてどの辺りを思い浮かべるだろうか.
おそらく, ほとんど人が間違えて使っているだろうから, 気軽な会話の場面では,
定義通りに受け取ってはいけない言葉の一つだ.

首都圏整備法に基づく定義では, 首都圏とは関東(1都6県)+山梨県のこと.
山梨県が「首都圏入り」した理由は金丸信の影響が大きかった, ということを
いつぞやに誰かに聞いたのだが, いま調べると, 金丸信の衆議院議員初当選が
1958年で, 首都圏整備法の制定が1956年だから, 何だかおかしいな.
金丸信は1972年に首都圏整備委員会委員長をしているので, 何らかの関係が
あるかも知れないが, 私が調べた限りでは, 1956年の制定時から山梨県は含まれ
ているようだ.


5月22日
「Lorentz力をどうやって導くか?」という話題が出たので, 電磁気学の
教科書をいくつか調べてみたが, よくわからない. ネットで検索すると,
次の論文を見つけることができた.

 J. H. Field, Phys. Scr. 73 (2006) 639,
 "Derivation of the Lorentz force law, the magnetic field
 concept and the Faraday-Lenz and magnetic Gauss laws using
 an invariant formulation of the Lorentz transformation"
 (arXivはこちら)
(筆者の名が1字ちがいで, E. H. Fieldでなかったのが残念?)

こういう基本的なことがらについて, これまで考えたことがなかったことを反省.
導出の大筋は追えた. Lorentz不変性から攻めるのだろうなあ, というのは予想
していた通りだったが, まだ細かい部分は追えていない.


5月20日
投稿中の論文をarXivに公開.

共著者に名前の入っているŽukovičさんから, $S=1$の反強磁性三角格子イジング模型の
研究に関するメールをいただいて, いろいろ考えているうちに, $J_3$相互作用を入れたら
面白いのではないかと思いついて始めた研究.

この論文の売りは次の3つ.
  • 単純な相互作用(双1次)のみで構成される一様系で, 格子や相互作用の乱れは一切含まない.
  • にも関わらず, 比較的広い温度範囲で短距離秩序相が現れる.
  • また短距離秩序相における緩和過程にグラス的な2段緩和が見られる.

フラストレーションによる磁気秩序の抑制と遅い緩和は, 統計物理学および物性物理学
のさまざまな文脈で現れる興味深い現象のひとつであるが, その機構についてはまだ
解明に至っていない問題が多い. 今回提案したスピン模型は, フラストレーションの影響に
よって非自明な挙動を示すスピン模型の中で, 最も簡潔な模型になっているのではないかと思う.
短距離秩序相の解明や, 緩和過程の解析など, まだ詰めが十分ではないところもあるが, 今後,
研究が進むにつれて, これまで未解明のまま残っている問題のいくつかは, この模型を通して
解明されるのではないかと期待している.


5月17日
シンポジウム「量子スピン系の物理」に参加.
立ち見が出るほどの盛況. でも, 参加者がおじさんばっかりだった
のは少しかなしかった. (自分のことはひとまず置いておく)

MS先生やMT先生も出席されていた. 前の職場ではたびたびMT先生を
見かけたが, 退職後, 職場以外でお見かけしたのは初めてのことかも
しれない.

講演は, 佐藤さんを除くとレビュー的な内容のものが多かった.
レビュー講演は, 話し手が貢献した研究内容の含有率が相対的に低く
なるにも関わらず, 話し手のカラーが色濃く出るから面白い. 紹介
する論文の選択や, 過去になされた研究の文脈を追っていくことで,
話し手が抱えている問題意識が周りとの関係を伴って浮かび上がって
くる. 生きた研究というものは, 薄暗く湿った研究室に潜む孤独な
研究者からではなく, その時代々々の空気から産まれてくるものなの
だな, などというようなことを講演を聴きながら考えていた.


5月16日
4号館前の雑木林でアカボシゴマダラが飛んでいた.
昨年の9月にも見かけたチョウだ. とてもきれいなチョウだが,
要注意外来生物とのこと.


5月14日
某大学のキャンパスマップがあまりに分かりにくくて驚く.
洒落た絵地図の下にキャンパス内の各施設名のリストがあるのだが,
各施設と絵地図に描かれた各建物との関係が全くわからないつくりになっている.

しばらく悩んだ末, リストに表示されている施設名をmouse overすることで,
当該建物の色が変わることが判明. これって説明無用なほど当たり前の仕様なのかな.


町田でおきたマグネシウムの燃焼による火災で消火活動がなかなか進まないらしい.
マグネシウムを周期表で見ると, 僕の舟が「七曲がり(NaMgAl)」するところにある.
つまり, ナトリウムのとなり. ナトリウムはアルカリ金属に属し, s電子を1つ放出
することで閉殻構造となり安定化する. そのため, 空気中でも酸化してしまうので,
灯油に浸けて保管する. 数年前, 某所で金属カリウムを流しに捨てた院生がいたが,
そんなことをしてはいけない. カリウムは水と反応し, 反応熱で溶融, そして爆発
を起すからである.

マグネシウムはそんなナトリウムやカリウムのとなり, 第2族元素に属し, アルカリ
金属同様, 酸化されやすい. だがアルカリ金属と異なり, 酸化は表面だけに留まり
不動態皮膜を張るので, 灯油に浸けておく必要はない. ただし, 燃焼中は別である.
燃焼中のマグネシウムが水に触れると, 燃焼はさらに加速する.

冒頭のニュースで私が気になったのは保管の方法. 上述のように, マグネシウムは
一度燃焼を始めると消火に手を焼く物質なので, 何時間も燃え続けるような量の
マグネシウムを一箇所に保管して良いのかどうか気になった.
ウェブページの「マグネシウムの基礎知識: 安全な取扱い」によると, 保管量に
関する記述はないが, 不燃構造の建物に保管するように記載されている. 不燃構造
の建物が何を指しているのか分からないが, 建物内のマグネシウムが発火して
しまっては, 建物の不燃・可燃の別なく, 消火は困難なものになるだろう.
もし保管量を規制するとなると, さまざまな製造の現場で困ることになるのだろうが,
今後同じ事故を繰り返さないよう, なんらかの対策を講じる必要があるように思う.


5月13日
大学のクスノキが花を咲かせ, 樟脳の香りをふりまいている.
樟脳でまず思い出すのは樟脳舟. 私が通っていた小学校の理科の先生は実験が大好きで,
たくさんの実験のうちのひとつに樟脳舟の実験があったように記憶している.

また, 樟脳といえば, タンスに入った防虫剤も思い出す. もはや防虫剤を入れられて
いるタンスも少ないだろうが, 防虫剤の代名詞と化している某社の製品を調べてみると,
樟脳はすでに使われていないらしい.

防虫効果のある樟脳だが, クスノキの花の受粉はどうなっているのだろうか.
気になって調べてみたら, 虫媒という記述を見つけることができた.
まあ落ち着いて考えてみると, アオスジアゲハの幼虫はクスノキの葉を食べて育つ
わけで, 防虫効果のある成分を持っているからといって, 全ての昆虫を寄せ付けない
わけでもないのだろう.

樟脳でもう一つ気になるのは「脳」の字. Wikipediaにはテルペノイド化合物を
植物名+camphor(メントールはmint camphorで, 漢字で書くと薄荷脳)で命名
し, camphorを「脳」と訳すとあるのだが, ではなぜcamphorを「脳」と訳すの
かがわからない.
調べてみると, 下の「日向のかおり」の樟脳雑話というページに説明があった.
「脳」の字には, ものの中心という意味があり, クスノキの成分を結晶化させた
ということで「脳」の字が使われているらしい. 広辞苑で裏をとってみると,
「脳」の3番目の意味に「主要なものや人(髄脳・首脳)」とあり, そう言われれば
そうかなあ, とも思うけど, 脳を含む他の熟語が見当たらないので, 今ひとつ
納得することができないままでいる.

日向のかおり - 樟脳雑話 -


5月12日
グラスの論文検索をしていたら, Ottochianという名の研究者を見つけた.
ふむ, グラスの世界には, かあちゃん(Kurchan)だけでなく, おとうちゃんも居ったんやな...


5月10日
ゆがんだ面に字を書くと, ときに面白い読み間違いが起るらしい.
今日見つけたのは, 学校などの存在を自動車運転手に知らせる

 文アリ→

の文字. 「文」の上部が道路の窪みに消え, 一瞬ではあるが次のように読めた.

 メアリー

あまりにも不意だったので, えっ、誰? メアリーって誰? と混乱してしまった.


5月9日
大学の駐車場まわりのエゴノキが咲いている.
エゴノキの芳香にさそわれて来たクマバチがブンブンとうなっている.
この揮発性のある良い香りの成分は何なのであろうか.
Wikipediaで調べると, ツツジ目エゴノキ科エゴノキ属のアンソクコウノキ
という木から安息香が採れるという. 安息香の主成分は安息香酸(C6H5COOH).
高校時代に勉強した記憶はあるが, その内容は憶えていない. たぶん,
フェニル化合物を複数並べ, それぞれの特徴やモル質量などから, 化合物が
何かを当てるようなことをしていたのだろう.


5月2日
某スーパーで売られている果物の鮮度に疑問を持ったのでテストしてみた.
テスト方法は単純で, およそどこのスーパーでも売られているゼスプリの
グリーンキウイを買ってきて, 日を置かずにすぐに食べて比べるだけ.

結果は予想通りで, 某スーパーの鮮度はひどく悪く, キウイは指で強めに押す
と崩れんばかりに熟している. はっきり言うと, これはもう腐る寸前. 腐って
いれば返品するのだが, 腐るところまでは行っていないのがとてもくやしい.
もう一方はというと, ほどよい固さを保ちつつ, かと言って熟し足りないと
いうことはない.

そっか, やはりあのスーパーは安かろう悪かろうなのね. と思い, レシート
を見ると, 某スーパーの値段が377円なのに対し, 鮮度の良いスーパーの方は
340円. えーっっと, ということは, 『安かろう悪かろう』という私の思い込み
は間違いで, あのスーパーは『高かろう悪かろう』だったのね. 某スーパーの
立地はとても良くて, いつも利用しているのだけど, 果物だけは他所で買うこと
に決めた.


4月28日
加藤さん来訪.
研究の話もしたのだが, 一番気になった話は二ノ宮知子の『87CLOCKERS』.
そうか, 主人公がオーバークロッカーの漫画がとうとう出たか.


4月25日
紙屋さん来訪. 最近の研究の話を聞かせていただく.
話を詳しく聞いていくと, 私が修士のころやっていた計算と関係がありそうな
気がしてきた. 岡部先生のアイデアで計算を進め, 学会で発表もしたのだが,
論文にまで持っていくことはできなかった.

その後, J. Houdayerがさらにひと工夫加え, 論文にまで持っていったのを見て,
その手があったか, と思ったが後の祭り. 二番煎じでは意味がなく, 二匹目のどじょうは
もうそこにはいない.

さて今回は, 地団駄を踏まず, 論文にまでもっていくことができるだろうか.


4月24日
International Center Kashiwa Office (KIO)のTips for More Effective Technical
Writing
を読む. この手のTips記事は, 自分のまわりだけで成立している小さな
世界の約束事を, さも世界のルールのようにドヤ顔で説明してあったりするのだが,
このページの解説は簡潔明快で納得のいくものであり, かつ, とても参考になる内容
が多かった.

ひとつ気になったのは下の例文.

ORIGINAL
We propose in this paper a novel method for calculating the
learning coefficient by using the exchange Monte Carlo (EMC)
method (Hukushima & Nemoto, 1996).

REVISED
We propose in this paper a novel method for calculating the
learning coefficient by using the exchange Monte Carlo (EMC)
method (Fukushima & Nemoto, 1996).

HukushimaさんがFukushimaさんに直されているのだ.
KIOのスタッフはたぶん福島さんがHukushimaさんだということを知っている.
そこをあえて, 上のような例文を示しているのは福島さんの人徳によるものだろう
と勝手に解釈してみた.

上の例文は「なるべく正しいHepburn式を使いなさい」ということなのだが,
Technical Writingとは異なる理由で, 正しいHepburn式を使うメリットも
ある. 私が大学院生のころGiven Nameが「じょうじ」という知り合いがいた
のだが, 彼がパスポートに「じょうじ」のアルファベット表記を``George''
にしたところ, 出入国審査が厳しくて大変困ったという話を聞いた. たぶん
日系外国人に間違われ, そんな奴が日本国のパスポートを持っていれば十分に
怪しいということなのだろう.

しかし, Hepburn式で名前を綴ってもなかなか正しい発音で読んでもらえない
のは困ったことだ. 私が初めての国際会議に参加したとき, secretaryが
ロシア人の名前を盛んに呼んでいるなあ, と思っていたら実は私のことを呼んで
いたということがある. Yusukeは外国人が発音すると大抵「ユースキー」になるので,
私は自分が呼ばれていることに全く気がつかなかったわけである(今はもう慣れた).

 ギヨエテとは おれのことかと ゲーテ云ひ (斎藤緑雨)

こういった事情に通じた親は, 自分の子の名前に, 外国(というか米英だけかも)でも
通じる名前をつけることもあるようだ. 有名なところでは, 川平慈温やその弟の慈英.
変わったところだと礼門と書いてRaymondなんて話も聞く.
(Raymondと書いてRain Manという話もありましたが, それはまた別の話)
でも最近は, 正しく発音してもらわなくてもいいのかな, とも思っている.
Michaelがマイケルでもミハイルでもミカエルでもいいんだから.

ちなみに, Hepburn式の創始者James Curtis Hepburnと女優のKatharine Hepburn
同じ一族だというのは良く知られた話なので, したり顔で話すと恥をかくというのは知って
おいてよい話のひとつである.


4月22日
研究室の前で誰かを探している人がいたので, 声をかけたら久保田実先生だった.
芝浦で客員教授をされているとのこと. 久保田先生は物性研でのオーバーラップは
もちろん, 宿舎が一緒だったり, 退職辞令を受け取る儀式?にも一緒に出た記憶が
あるし, 元久保田研のS君から何かと話を聞いたりと, 直接のつながりは無いのだけど,
間接的にはいろいろとつながっている印象がある. ケビン・ベーコン数が2のリンクが
たくさん張られている, といった感じだろうか.


4月17日
手持ちの論文リストの中からANNNI模型の論文をMigemoで検索.
``ANN''と入力したところで文字列``Sb''がマッチする.
Migemoのバグかと思ったが然に非ず. ``Sb''は原子番号51の
元素「アンチモン」. こんなものにまでマッチするとは, Migemo
(というか辞書SKK?)畏るべし.


4月14日
大学入口の桜にミツバチが群がっていたので, 桜のハチミツについて
調べてみた. 桜の開花時期はミツバチにとってはまだ寒く, 開花の期間
も短いこともあって, 桜のハチミツというのはなかなか難しいようだ.
難しいといっても, 桜のハチミツが皆無というわけでもなく, 桜のハチ
ミツを謳っている商品も存在している. しかし, どうやって桜のハチミツ
であることを確認しているのだろうか. 蕎麦ならば臭いで分かるし, 食べ
慣れたレンゲならば判別できるかもしれないが, 桜の葉(の塩漬け?)を
つけ込んだハチミツもあるようだから, それをもって桜のハチミツと言わ
れれば簡単にだまされる自信がある.


4月7日
英国で, 交通標識から「アポストロフィー(')」を省略したい地方議会と
それを止めて言葉を守ろうとする動きがあるらしい.

【英国で大論争、交通標識にアポストロフィーは必要か】
http://www.afpbb.com/articles/-/3011860

詳細は上のリンク先を参照して欲しいのだが, アポストロフィーを省略
したい理由は,

> 今年、ぜんそくを患っていた10代の子が、アポストロフィーのせいで
> 救急車が違う住所に向かったために死亡した。
>
> ケンブリッジ市議会のティム・ワード(Tim Ward)氏は、「国のガ
> イドラインには、新しい通りの名前に句読点を入れないことが推奨さ
> れていた。句読点が救急サービスのソフトウェアでうまく処理されて
> いなかったためだと思われる」と、AFPに語った。

ということらしい. 「釣りネタ」のような気がしないでもないのだが,
あえて釣られてみると, これはたぶん, 救急サービスで用いているデータ
サーバで用いているデータベース管理システム(RDBMS)がSQLか何かで,
テキストにアポストロフィーが入った場合のチェックとエスケープが
できていないということなのだろう.

この手の失敗は頻出の部類(SQLインジェクション対策を学ぶときの
最初の例だと思う)に入るし, 人命にかかわる「バグ」の放置が
「ただしい言葉遣いを尊重するグループ」と「地方議会」の争いに
すり替えられることはありえないと思うので, このニュースは「釣り
ネタ」だと判断したわけだが, 本当のところはどうなのだろうか.


4月4日
工学部4号館前の雑木林でタヌキを見かけた.
私と目が合うと, 物欲しそうな顔で私の方をじっと見つめたが,
知らぬ顔でその場をやりすごす.

再び4号館の前を通ると, 学生が生協のパンでタヌキを餌付け
しているようだ. 最初に見かけた時, 人を怖がらない様子が
気になっていたのだが...

大学の南側には住宅地が広がっている. 生ゴミは回収日に路上に
置かれ, カラスよけのネットで覆われるのみ. タヌキは夜行性だから,
夜に出された生ゴミに手をつけ始めるのも時間の問題だろう. 邪魔もの
にされる前に, 戻るべき場所に戻って欲しいのだが, それもなかなか
難しいように思われる.


3月31日
$S=1/2$ 三角格子反強磁性Heisenberg模型に長距離相関はなく, 系は
スピン液体だという主張をされてしまった. 秩序ができているように
見えるのは, サイズが小さかったり, 境界条件, 基底の取り方による
artificial な効果であるという主張なのだが, 本当だろうか.
長距離秩序があるかないかというのは微妙な問題だと思うのだが, 厳密
対角化[1], 古典系[2], DMRG[3], テンソルネットワーク[4]などの論文を
読むかぎり, 低温でかなりの範囲でスピン-スピン相関が成長している
のはほぼ間違いないと思うのだが...

[1] B. Bernu, P. Lecheminant, C. Lhuillier, and L. Pierre, Phys. Rev. B 50, 10048 (1994).
[2] H. Kawamura, A. Yamamoto, and T. Okubo, J. Phys. Soc. Jpn. 79, 023701 (2010).
[3] S. R. White and A. L. Chernyshev, Phys. Rev. Lett. 99, 127004 (2007).
[4] K. Harada, Phys. Rev. B 86, 184421 (2012).


3月27日
学会初日. 今回は東海大学の湘南キャンパスで開催された.
この辺は, 小中学生のころに大学生ボランティアの引率で, 友達と塔ノ岳,
鍋割山に初日の出登山をしたり, 親と大山豆腐を食べにきたりと何度か来て
いるのだが, それらはいずれも非日常の世界の話. 学会参加のために来るの
はなんだか不思議な感じがする.

東海大学前駅は, 鶴巻温泉駅との間隔が狭いので, 大学が来てから新設された
駅なのだろうと思ったのだが, 大学が来る前から大根(おおね)駅という名で,
駅そのものはすでにあったようだ. なぜここで駅の間隔が詰まったのか気に
なるので, 今度調べてみよう.


3月26日
猩猩蠅という名は赤い眼の色から来ていると思っていたが, 酒に寄ってくることも
名の由来なのだそうだ. しかし, 猩猩蜻蛉, 猩猩木, 猩猩袴など, 猩猩と名のつく
ものは, いずれも赤いのが特徴なのを見ると, 酒に寄ってくるだけのことで「猩猩」
の名を冠したとは信じ難い.
虫取りをしたことのある人ならよく知っていると思うが, 酒に寄ってくるのはなにも
猩猩蠅に限った話ではなく, 樹液を好む昆虫のほぼ全てが酒に寄ってくる. 最近,
ペットボトルに酒と酢と砂糖をいれてスズメバチを誘き寄せて駆除する方法が広まって
いるが, Googleで画像検索すると, クワガタやカナブンなども一緒に捕獲されている
のが分かる(Gが捕獲されていないようなのが少し不思議).

なので, 猩猩蠅の名の由来は, まず眼が赤いのが先にあって, 酒に寄ってくるという
理由はその後に追加したような気がしてならないのだが, 本当のところはどうなので
あろうか.


3月24日
イクラと筋子の違いをこれまでずっと勘違いしていたことに気づく.
断りを入れる必要はないと思うが, 今の場合, イクラとはロシア語でいうところの
魚卵の意味ではなく, サケの卵のことである. ちなみに красная икра(赤いイクラ)は
サケの卵で, чёрная икра(黒いイクラ)はチョウザメの卵. 同じイクラだと思って
一緒くたにすると, レストラン等でひどい目に遭うことになる.

それで, イクラと筋子の違いだが, 見た目に違うことはもちろん知っている.
卵の粒がバラバラになっているのがイクラで, つながっているのが筋子である.
何を勘違いしていたのかと言うと, イクラの卵は産卵前の成熟した, すぐ産める
バラバラになった状態のもので, 筋子とは未成熟でバラバラになる前のものだと
勘違いしていた.

Wikipediaを調べると, 皮がある程度しっかりしていないとイクラへの加工が
難しいと書いてあるので, 勘違いはまったくの的外れなものではないようだ.
確かにハラ子は, 沖で獲ったものの方が皮が柔らかくておいしいとは聞いていたし,
筋子をバラしてイクラ状にしたものがあることは知っていたが, あれはイクラっぽい
筋子なんだとずっと思っていた. まさか筋子を単にバラしたものがイクラそのもので
あったとは. 知らないことは意外に知らないものである.


3月22日
菊池先生も放射線の本を出されたことを知る.

『いちから聞きたい放射線のほんとう - いま知っておきたい22の話』
菊池誠, 小峰公子, おかざき真理

Amazonをチェックするとベストセラー1位(カテゴリ 防災)になっている. 物理の先生が書いた本で
1位になるのはなかなか無いことなんじゃないかな.

第一部の5のタイトルを見過ごせない同業者はたくさんいるはず.
私の博士論文の主要部分が菊池先生からMachtaたちのInvaded Cluster Algorithmについて
教えていただいたことがきっかけで始まったのはたのしい思い出である. 昼ご飯を食べに生協に
向かう途中, 理学部棟の2階を歩きながら議論をしたことを今でもはっきりと覚えている.
私の博士論文の最後を

 "jacta est alea"

と結んだのは, 当時, 塩野七生の『ローマ人の物語』を読んでいたこと, 逸身喜一郎先生の
『通読できるラテン語文法』を読んでいたこと, そして菊池先生のあのテキストからの影響が
大きい. 製本された論文を見返すと, 大学院生として過ごした5年間の多くがそこに詰まっている.
また, 博士論文は研究者として自立する最初の一歩の証なのだから, その証をコピペで汚すのは
とても勿体ないことだと思う.


話を放射線の本に戻すと, 共著者の小峰公子さんにも, たぶんお世話になっている.
「たぶん」と書いたのは, 当時, 小峰さんがZABADAKに加わっていたかどうか分からないから.
結婚披露宴での岡部先生の乾杯の挨拶の後に『収穫祭』を, 生い立ちビデオ(あぁ恥ずかしい)
では『遠い音楽』を選曲した. 他には菅野よう子さんの作品(そういえば攻殻機動隊のサントラを
教えていただいたのも菊池先生なのだった)なども入った披露宴CDは, 後日, 多くの方から
曲目リストの問い合わせがあったのもたのしい思い出である.

田崎先生の本がネットからダウンロードして読めるのに比べると, 買ってまで読む(当たり前!!)
のは少し抵抗があるのだけど, 今度書店に行ったら手に取って見てみようと思う.


3月21日
スーパーで買ってきたインスタントのうどんをレンジで温めていると, なにやら
懐かしい臭いがただよってきた. 食べ物の臭いだけど, なんだか少しクサい.

なんの臭いだっけ? と, しばらく考えて思い出した. 院生のころ, 同じフロア
にあった研究室が飼っていたショウジョウバエの餌の臭いとおんなじだ.
より正確には, とうもろこし粉を乾燥ビール酵母で発酵させたときの臭いである.

臭いとともに, マナーの悪い人たちに汚されたフロア共用のゴミ箱(+ Gたち)や,
デュワー瓶をガラガラ鳴らして傍若無人に廊下を行く人たちのことを思い出した.
あまりうれしくないプルースト効果である. 私たちがいたフロアにだけGが異様に
集まっていたのはビール酵母が主な原因だったらしい. Gのビール好きは, 洗浄が
不十分なビール壜や缶を屋外に放置したことのある人ならよく知っていると思う.

そうこうしている内にレンジの電子音が鳴る. うどんができたようだ.
うどんの味は? なぜあんな臭いを発したのかはよくわからないが, 味はふつうで,
おいしくいただきました.


3月14日
谷保という地名が, 保谷から移り住んで来た人たちが保谷を忘れない
ためにつけたという記述を見つけてギョッとした.
谷保という名は, 谷をなしている窪(久保)地であり, 実際の地形も
多摩川が削った河岸段丘の縁に位置していると理解していたからである.

まず保谷から調べてみると, 地名の由来は,

 江戸時代の文献には穂屋または穂谷の地名が用いられていた。穂の文字
 が使われていたことから、周辺に比べ水利が良く、植生が豊かな土地で
 あることが地名の由来であると考えられている。その後17世紀後半(元禄)
 の頃には、公文書に現在の保谷の文字が記されており、幕府に提出する
 書類に間違えて保谷を使い、以後この字になったとあり、現在の地名は
 この頃確定したと思われる。

 西東京市成立後、その名は、駅名の保谷駅、町名、由来する企業名(HOYA)
 として残っている。

とある。後半の説明は地名の由来とは関係ないが, お世話になったこともある
HOYAが保谷市に由来していることを今日初めて知ったのでこれも転記した.

では, 谷保はというと,

 開業当時の地名(谷保村、現国立市)から。谷保とは「湿地帯の多い台地」を
 意味する言葉で、この近辺では稲作が盛んであった。鎌倉時代後期には既に
 「谷保郷」という地名があった事が判明している。
 元々「やぼ」と読まれていたが、南武鉄道が当駅を作る際に「やぼ」が「野暮」
 に聞こえるのを嫌って「やほ」と名付けたと言われ、その名が定着して今に
 至っている。

とあるので, 上の記述に従えば谷保保谷起源説は誤りであると推察される.
ちなみに, 谷保と野暮の関係は太田蜀山人の

 神ならば 出雲の国に行くべきに 目白で開帳 やぼの天神

という狂歌がよく紹介される. 谷保天神が賽銭集めに目白で天神様の御開帳を
したのだが, 神無月に実施したのを見とがめられ, 野暮と谷保のダジャレで
〆られてしまったのである. そんなわけで上の記載にあるように, 地名として
の「谷保」は南武線が開通したおりに「やほ」に転じてしまったが, 神社の
名前「やぼてんじん」として「やぼ」の読みは今も残っている. 元々が谷の
窪地なのであれば, 「やぼ」と読むのも納得でき, 保谷の人が名付けたという
説には少々無理があるように思う.

そんな無理な説明は誰がしたのかな, と思って検索を続けていたら, ここ

 西東京市の保谷地区の住民が農作物の不作が続き、新たな開墾地として当該
 地に移り住み、元の保谷の出身を忘れないため谷保という地名をつけたとい
 う伝説も存在する。

というわけで, 冒頭の記述は誰かが荒らしたwikipediaのページから引いてきたようだ.


3月6日
楽しかった研究会も今日で最終日.
今回の発表は研究の萌芽的内容だったので, 次回はその後の発展について
発表できるといいなと思う.

新千歳空港で日ハムの中田翔選手らしき人とすれ違う. どこかで見たこと
ある人だなー, と思って見ていたら, こっちに気づいて微笑んでくれた.
ただのそっくりさんでないことを願う.

飛行機は吹雪で出発が1時間30分ほど遅れる.
冬期の研究会は, こういうのがあるから怖い.
往きでなく帰りの飛行機でよかった.


3月3日
明日から北大で研究会. 今日は移動日.
新千歳空港から札幌に移動する間, 車窓から見える北国の空の美しさに
おどろく. こういう空は関東近郊で見ることはできない.
低く漂う霧状の巻層雲から, 空気が冷たく乾燥していることが見て取れる.

夜は炭火焼きの居酒屋で厚岸の牡蠣や氷下魚の生干しなどをいただく.
親と暮らしていた頃は, 氷下魚の干物をしばしば食していたが, 生干しは
今日が初めて. 七味がのったマヨネーズがついてきたが, マヨネーズを
つけると魚の味が飛ぶ. つけない方がおいしく感じるが, 私はスルメにも
マヨネーズはいらないと思っているから, これは好みの差の範囲. 棒鱈の
ように干したものと違い, 生干しはもともとの素材の味がたのしめて良い.


2月20日
大学を休んで散歩に出かけたら, Googleマップのストリートビュー撮影車に
写真を撮られてしまった. 写真を撮られた確証はないのだが, 周辺の道を全て
舐めるようにして走行していたから, お仕事中だったのはほぼまちがいない.

撮影車が収集した画像を公開するまでに数ヶ月から数年かかるということらしい
から, きっと忘れたころに今日の画像がアップされていることだろう.


2月19日
Kindleで表示することのできないPDFは, これまでcalibreというアプリを
使っていたが, K2pdfoptというアプリを使うと読めなかったPDFが読めるよう
になるうえに, 表示のレイアウトを変えて読みやすくしてくれることがわかった.

Mac OSXではCUIでの利用になるが, 普段GUIを使わない自分にとっては全く
問題ない. 簡単な利用法はココに記載した. ネットにもっと詳しい利用方法が
載っているし, マニュアルを読めばもっと便利な使い方とかもわかると思うの
だが, すでに満足しているので, 詳しい利用方法については気が向いたときに
調べようと思う.


2月15日
宇都宮線が大幅に遅れていたので, 野田線に乗って七里経由で大学に来た.
普段であれば, 七里駅から大学まで徒歩30分程度なのだが, 今日は1時間
近くかかってしまった.

時間がかかった理由は雪や路面の凍結ではなく, 道路の冠水. ゴム長靴で
も履いていればよかったのだが, 履いていたのは普通の靴だったので, 道
を選んでいたら時間がかかってしまった. 靴は水を通さないものだったので
最悪の事態は免れることができた. 途中, 革靴を履いたスーツ姿の人を一人
見かけたが, あれでは靴の中は水びたし(しかも氷水)であっただろう.

しかし, びっくりするぐらい冠水していたので, 東京地形地図で七里駅から
大学までの地形の確認をしてみた. すると, この経路は道路が冠水しない
はずがないぐらい, わかりやすく谷を通っていて, 特に冠水がひどかった
地域は, 崖下に相当する場所であることがわかった. 以前, 七里駅前の
風渡野(ふっとの)という珍しい地名の由来を調べたとき, 古語の「火門(ホト)
から来ているということを学んでいたのだが, 今回の大雪で期せずして地名
とその土地の特性がリンクしていることをあらためて実感することになった.


2月13日
Intel HaswellマシンにCentOS 6.4をインストールしたのだが,
kernel panicを起して一度も起動しなかった. いろいろと調べて
みたのだが, 調べれば調べるほどHaswellとCentOS 6.4は相性が
悪いことがわかってきたので, 観念してCentOS 6.5をインストール
することにした. CentOS 6.5はLustreが追いついていないので,
Haswellマシンからは, しばらく共有ファイルシステムを使えない
ことになるが仕方ない, Lustreが追いついてくるのを待つことにする.

以前, LustreFSを構築するときにお世話になったWhamcloudが
Intelに買収されていた. ついにLustreFSが有料になってしまった
と思ったが, そうではないらしい. わかりにくいがIntelのウェブ
ページや, OpenSFSのページからrpmファイルを無料で入手する
ことができる. HaswellマシンにLustre clientをインストール
するときには, また作業ログを残しておこうと思う.


2月7日
公園のすみでハシブトガラスが雪をつついて遊んでいるのを見かけた. 最初は
雪で水分を摂っているのかと思っていたのだが, 水を飲む場所なら他にいくらでも
あるし, 嘴でくずした雪を飲みこんでいる様子も見られないので, やはりあれは
遊んでいたのだろうと思う.

このようなふるまいは雪国でも見られるのだろうか. もし雪のあまり降らない
地域にのみに見られる現象であれば, カラスも希な気象現象に``アガる''ことの
傍証ということになり, とても興味深い.

枕草子には,

 野分のまたの日こそ いみじうあはれにをかしけれ

とあるけれど, 「またの日こそ」なんていうのは気取っているようにしか感じら
れない. 台風はやはり, 風がだんだん強くなっていくときのゾワゾワした感じが
良い. そういう直接的な現象に心動かされるのを隠すのが日本の美意識なのかも
知れないが,

 黒玉之 夜去来者 巻向之 川音高之母 荒足鴨疾
 ぬばたまの 夜さり来れば 巻向の 川音高しも あらしかも疾き

なんて歌を発見すると「やっぱり万葉集はいいねぇ」などと思ってしまう.

話がそれた.

公園でハシブトガラスとハシボソガラスの体格差を見ていたときに気づいたこと
だが, カラスやハトの幼鳥を見たことがない. 若い個体は見かけるのだが, 小さい
幼鳥はどこにいるのだろう. Wikipediaで調べると, キジバトは約15日, カラス
は約1ヶ月で巣立つのだそうだ. 生後15日のハトが成鳥と同じ体格になっている
とは思えない. たぶんこれまでずっと見過ごしてきたのだろう. 世の中は気づいて
みるといろいろと知らないことが多いものだ.


1月30日
最近, 静電気を除電するキーホルダーを使っている. キーホルダーの
端に導電性のあるゴムが貼ってあり, その反対側を持って, ドアノブ
などに近づけるとゴムから放電して, 体に溜まった静電気を逃がす
仕組みになっている. キーホルダーの中には放電管が入っているらしい
ので, 放電時の電気の流れを直線的に考えると,

ドアノブ ⇐ ゴム(電極) ⇐ 放電管 ⇐ 手

となっていると予想される.

指から放電したときに痛みを感じる仕組みの本当のところは知らないが,
経験的には, 単位時間あたりのエネルギー流量に比例するように思われる.

そう考えると, 放電管のはたらきが重要そうだ.
キーホルダーをドアノブに近づけると, 放電管の電極間に電圧がかかり,
電圧が一定値VBDを超えると放電管に電気が流れる. このVBDは体とドアノブ間
の電圧よりも小さくする. そうすることによって, キーホルダーとドアノブ
の間で短絡が発生する前に放電管に電気が流れ, 体にたまった電気がキーホルダー
についているゴム(電極)に移動する.
最後にキーホルダーとドアノブが接触し, 体とドアノブが等電位になるまで
電気が流れる.

おそらく中の放電管は容易に短絡するので, 放電管のはたらきだけで単位時間
あたりのエネルギー流量を減らすのは難しそうだ. この問題は体とゴム(電極)
との間に抵抗を入れて, RC回路を形成することで解決できそうだ. これは,
導電性のゴムの抵抗値をおおきくしておくことで十分かもしれない. 導電性の
ゴムの抵抗率をネットで調べると, 10-2〜104Ω·m ぐらいあるらしい. グラファイト
の抵抗率が10-5Ω·m 程度なのを考えるともっともらしい値にみえる. 人間の体を
コンデンサに見立て, 水コンデンサだとおもってざっくり計算すると,
電気容量は10-9Fぐらい. ゴムの抵抗がkΩオーダーだとすると, 時定数はマイ
クロ秒のオーダーになる. ただ, 放電時に光るキーホルダーのダイオードは
マイクロ秒よりは明らかに長く光っているので, この評価は何か間違えている
かも知れない.

たぶん, 上のような理由で放電の時間を長くし, 単位時間あたりのエネルギー
流量を低くおさえているように思うのだが, 考えがまだ浅い気もする.


1月18日
$\TeX$ファイルで図が正常に表示されずに苦戦する. 数時間の格闘の末,
graphicx.styの読み込み時にdvipdfmx(あるいはdvips)を正しく指定
していなかったことが理由と判明.

実は数ヶ月前にも同じ失敗をしている. そのときはMacPortsのupdateの
直後だったので, 原因の切り分けが難しくて, やはり時間を無駄にしたの
だった.

という訳で, $\TeX$の図の表示がおかしかったらまずgraphicxを疑え,
ということを覚えておこう.


1月10日
日本学術振興会からアンケート依頼の封書が来た. どうやらどこかで迷子に
なっていたらしく, アンケートの記入期限は11月30日でひと月以上も前に
切れている. Webでも回答できるということで, 一応入力しておこうかと
思ってURLを見るとどこかの業者さんのページが指定されている. こういう
場合, アンケートはほったらかしにするのが正しい対応だと自分では考えて
いて, 昨年9月に日本学術会議から短縮URLで身元不明なURLに飛ばされる
アンケート依頼があったときにはアンケートに協力しないという選択をした
のであった.
で今回はというと, 日本学術振興会のウェブページにも本アンケートの記載
があるから確認せよ, という記載が依頼状にあって, その確認もすぐに(封書
が迷子になっていたため, その記載はだいぶ過去のログとなっていたが...)
できたのであった. こういう心遣いがされていると, 気持ちよく協力する気に
なるから不思議なものだ.
アンケートのウェブページは期限の切れた今日でも記入可能であったので,
参考にされるかどうかはわからないけど, 入力だけはしておいた.


1月8日
スーパーで古くなった傷もののリンゴ(つまり2回値引きされていた)が
捨て値で売られていたので買ってみた. 食べてみると, 傷ものの頃は
お買い得だったのだろうが, おそらく収穫から時間が経っているせいで
風味がだいぶ落ちている. 比較的日持ちするリンゴも生鮮食品なのだな
ということに初めて気がついた次第.

そのまま諦めるのもつまらないので, 乱切りにして電子レンジにかける
ことにした. 加熱することで抜けた風味をごまかすのが狙い. 皮を剥い
たリンゴを乱切りにすると何だか不思議とジャガイモに見えてきた.
学部生のころフランス語の授業でジャガイモのことをpomme de terre
(地のリンゴ)と習い, そのときは「なんていいかげんな命名なんだろう」
と思ったが, ジャガイモとリンゴが似ていることに今日初めて気がついた.
しかし, ``pomme de terre''と名付けられた頃のジャガイモは今より
だいぶ小さかったはず. Albrecht Dürerの『アダムとイヴ』を見ると
昔のリンゴも小さかったようだけど...?

加熱した古びたリンゴはというと, 加熱前に比べるとだいぶおいしくなった.
本当はレンジより鍋で加熱できれば良いのだろうけど, 研究室で火を使う
のは何かあったとき問題になるのでこれで我慢. あとはシナモンでもあれば
言うことなし.


1月4日
あけましておめでとうございます.

新年に帰省し, 自分が大学を卒業するまで住んでいた団地の取り壊しが
始まっていることを知る. 帰省先からは歩いて行ける距離にあるので,
久しぶりに団地を訪れ, 辺りをぶらぶらしてみる.

昔は道路網の袋小路に位置していた団地で, そのため数多くの車が
違法投棄され, さらにそれらをそのままに放っていたものだから,
JAFMateなどに取り上げられたものだった. 今では団地周辺の道路も
整備され, 少年野球のチームに入っていたころは, よく壁当てに
使っていた団地を囲っていた壁も撤去されて, 外界との風通しもよく
なったようだ.

団地の見た目からは取り壊しを急ぐ必要はないように見えたけれど,
僕らが子供のころから外壁が崩れ, コンクリの中の鉄筋が何年もむき
出しの状態のまま放置されて内部の鉄筋がボロボロになっていたり,
柱らしい柱のない建造物だったから, 壊されるべきものではあるのだろう.
しかし, メンコやドロケ, 缶蹴り, 太平洋, RCカー, ビニールボール野球
などして遊んだ団地が消えるのはやはりさびしいものがある. 消える前に
訪れることができて良かったと思う.

最近は団地の造成もめっきりなくなり, 特に私が住んでいたような低層の
団地は消えてなくなる運命なのだろう. 住んでいた団地が取り壊されることで,
自分が高度経済成長期の生き証人になってしまうようで少し複雑な気持ちである.


雑記(2013年)